温暖化応答予測のための炭素フラックス観測の広がりによって、群落レベルでの「光合成」の理解は大きく進んだ。しかし、その光合成産物の樹体内での「配分」については、炭素動態予測のうえでは等しく重要であるにもかかわらず、あまり注目されてこなかった。なかでも、植物根に共生している菌根菌への炭素配分は、ホストである植物根の呼吸と一括りにされ無視されてきた。しかし、根呼吸の過半が菌根菌呼吸である可能性さえ指摘されており、菌根菌呼吸を含めた統一的な炭素配分の理解が求められている。本研究は、菌根菌呼吸の野外リアルタイム測定手法の開発と、菌根菌呼吸に及ぼす環境(温度・水分)と呼吸基質(光 合成産物)の影響を明らかにすることを目的とした。 まず、菌根菌呼吸の野外リアルタイム測定手法を開発し、森林総研関西支所の京都府山城試験地において測定を行った。定期的に呼吸カラーの掘り取りを行い、根・微生物呼吸によるコンタミ量の測定を行った。掘り取ったカラー内の菌根菌量を、顕微鏡を用いた直接観察法によって定量した。そして、菌根菌呼吸とその規定要因である温度・水分との関係性、また菌根菌バイオマス量との関係性を比較・検討した。
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