研究課題
本研究課題では、木質資源の有効利用へ向けたナノセルロース由来機能性材料創出を目的としており、樹木から調製されるナノセルロースの特異的サイズおよび表面物性を活かしたナノセルロース/ポリマー複合粒子の合成を行っている。本年度は、これまでに確立した合成法を用いてナノセルロース/ポリマー複合粒子の合成を行い、その物性解析を行った。針葉樹漂白クラフトパルプに対してTEMPO(2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl)触媒酸化を行い、得られたパルプの機械的解繊処理によって、表面にカルボキシ基を有するナノセルロースの分散液を調製した。このナノセルロース分散液とモノマーを混合し、機械処理を施すことで、ナノセルロースで安定化したoil-in-water (o/w)エマルションを調製した。このエマルション液滴中のモノマーを重合することで、CNFで表面を包んだマイクロ粒子の合成を行った。このようにして得られたマイクロ粒子に対して各種分析を行った。粒子の動的光散乱測定により粒度分布を評価したところ、平均径は3マイクロメートルであり、光学顕微鏡観察の結果とよく一致した。また、粒子のゼータ電位測定を行ったところ、値は-47 mVであり、もともとのナノセルロースのゼータ電位とよく一致することが分かった。すなわち、粒子表面は均一にナノセルロースで覆われていることが示唆された。この粒子を走査型顕微鏡で観察したところ、粒子表面は均一かつ高密度にナノセルロースで覆われていることが分かった。表面を覆うナノセルロースの層は約8 nmであり、熱重量測定で評価した値とよく一致した。さらに、粒子内部は空隙などが存在せず、均一に重合したポリマーで充填されており、目的としている構造を形成することができた。
2: おおむね順調に進展している
ナノセルロース/ポリマーマイクロ粒子の調製方法を確立し、得られる粒子の基礎物性評価が行えている。各種顕微鏡観察や光散乱法により粒子の構造を精密に評価する手法も確立しており、計画通りに研究が行えている。
当初の計画通り、得られたナノセルロース/ポリマーマイクロ粒子の物性評価を引き続き行う。粒子の力学物性評価や表面ナノセルロースの修飾など、利用へ向けた機能性評価を行う。
参加予定であった学会に参加しなかったため差額が生じた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 産業財産権 (2件)
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