研究課題
本研究課題では、木質資源の有効利用へ向けたナノセルロース由来機能性材料創出を目的としており、樹木から調製されるナノセルロースの特異的サイズおよび表面物性を活かしたナノセルロース/ポリマー複合粒子の合成を行っている。本年度は、これまでに確立した合成法を用いてナノセルロース/ポリマー複合粒子の合成を行い、その物性解析を行った。針葉樹漂白クラフトパルプに対してTEMPO(2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl)触媒酸化を行い、機械的解繊処理によって、ナノセルロースの水分散液を調製した。このナノセルロース分散液とモノマーを混合し、超音波処理を施すことで、ナノセルロースで安定化したエマルションを調製した。このエマルション液滴中のモノマーを重合することで、ナノセルロースで表面を包んだ粒子の合成を行った。粒子表面のナノセルロースの分子吸着挙動を調べるため、カチオン性染料であるmethylene blue (MB) の吸着挙動を調べた。pH 7.0ではpH 2.5よりも高いMB吸着量を示した。これは粒子表面に存在するナノセルロースがカルボキシ基を有しているためである: pH 2.5ではナノセルロース表面のカルボキシ基がMBとイオン結合できないため、吸着機構は物理吸着のみと考えられる一方、pH 7.0では物理吸着だけでなくイオン結合によってもMBと相互作用可能である。このように、得られた粒子はpH条件に依存した吸着挙動を示した。また、pH 2.5の実験データをLangmuir modelでフィッティングしたところ、低濃度でよく一致していた。すなわち、低濃度では理論通りの単層吸着が起こっていることが示唆された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Frontiers in Chemistry
巻: 8 ページ: 1-6
10.3389/fchem.2020.00068
Nanoscale
巻: 11 ページ: 15004-15009
10.1039/C9NR02612F
Langmuir
巻: 35 ページ: 10920-10926
10.1021/acs.langmuir.9b01977
巻: 7 ページ: 1-8
10.3389/fchem.2019.00316
Biomacromolecules
巻: 21 ページ: 939-945
10.1021/acs.biomac.9b01584
巻: 8 ページ: 1-9
10.3389/fchem.2020.00037