研究実績の概要 |
沿岸海域において水質と生物生産性の両方を維持するために,各海域に適した栄養塩濃度レベルの管理が求められている。本研究では,貧栄養化に伴うノリ・ワカメの色落ちや貧栄養状態でも増殖可能な有害プランクトンによる被害が問題となっている東部瀬戸内海において,分解に数週間を要する準易分解性溶存有機物が海水交換によって内湾から流出することが,湾外への栄養塩流失に及ぼす影響を明らかにする. 平成29年度には,物理場及び生物化学環境の観測を淀川河口域において平成29年7,8,9月に計6回,また大阪湾全体および紀伊水道において平成29年5,8,11月および平成30年2月に計4回実施した.陸域からの栄養塩供給を見積もるための陸域河川の生物化学環境の観測を平成29年5,7,8,9,11月および平成30年2月に計6回実施した.また採取した海水や河川水を用いて各20日間の有機物分解実験を行なった.得られたサンプルを分析し,各地点,各季節における準易分解性溶存有機物の濃度を求め,分布及び変動を解析した. また,世界初の静止海色衛星COMSから得られる高い時空間解像度(水平解像度500 m,1時間に1回)の有色溶存有機物の光吸収係数(aCDOM)データを,2011年から2017年までの7年分について整備した.またaCDOMデータと塩分の関係式を用いて,東部瀬戸内海における塩分の分布図を作成し,表層の低塩分水の動態を解析した.
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