寄生性カイアシ類は、様々な魚類に深刻な被害をもたらす原因となる。本研究では、有害な熱帯性魚類寄生カイアシ類による漁業被害を最小限に抑える方法として、現時点における寄生性カイアシ類の分布を明らかにし、国内海域に侵入・定着済、または近い将来そうなる可能性のある有害熱帯種を特定し、それらの寄生的、生態的特性に沿った効率的防除のため基盤的知見を得ることを目的とする。本年度は最終年度である。まず、昨年度までに実施した野外調査で得られた寄生性カイアシ類のうち2種については、分類学的研究を実施し新種記載を行い、発表した。また小型魚類から採集されたカイアシ類2種についても同様な手法で研究を進めたところ、未記載種であり属も未記載ということが明らかになり、新属新種として共同研究者と発表準備中である。なお、当該年度には鹿児島本土周辺、宮崎、三重、奄美大島、沖縄島、西表島において新たに熱帯性寄生性カイアシ類の探索を行った。また、国外の熱帯域ではシンガポール海域での調査を実施し、熱帯種の多様性把握を試みた。また、比較標本採集のため、米国西岸とオマーン湾においても調査を実施した。得られた標本類に基づき分類学的研究を実施した結果、多くの新しい種の存在が現在明らかになりつつあり、現在順次種同定を進めているところである。また、寄生生態の知見について、宿主魚に体の一部を穿入させるヒジキムシ科の複数種について、マイクロ-CTによる非破壊的画像解析を試みたところ、種ごとに筋肉組織や血管系にあたえる損傷の度合いが異なる可能性が示唆された。この結果については、ロシアで開催された国際会議の場で発表を行った。
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