研究課題
本年度はHD反応によって窒素ガスが生成する機構を明らかにすべく研究を行った。Anammox細菌の一種であるB. sinicaを用いて、HD反応の反応様式を明らかにするため15NH2OHを用いたトレーサー試験を密閉バイアル内で実施した。培養開始直後より、15N標識された窒素ガス(15-15N2)およびアンモニア(15NH3)が生成することを見いだし、15NH2OHが枯渇するとこれらの生成は停止した。以上のことから、B. sinicaがHD反応によってNH2OHを間違いなくN2およびNH3へ変換していることを実証することができた。B. sinicaのHD反応を触媒する酵素を同定するため、昨年度に引き続き、酵素活性の測定を試みた。比較的温和な破砕条件であるビーズビーディング法で破砕・調整した細胞破砕液を用いてHD活性を測定したが、可溶性画分、膜画分のいずれからもHD活性を検出することができなかった。これは触媒酵素が酸素感受性を持つ酵素であるか、酵素活性に必要な複合体形成が細胞破砕の過程で破壊されてしまったことが原因と考えられる。HD反応をin-vitroで観察することが困難であることが明らかとなったため、ヒドロキシルアミンの代謝をin-vivoでイメージングすることを試みた。文献調査の結果、ヒドラジンと特異的に結合する蛍光プローブ(rhodol levulinateプローブ)が近年開発されており、この蛍光プローブがヒドロキシルアミンとも反応しうることを見いだした。そこで、ナノテクノロジープラットフォーム事業(受け入れ:千歳科学技術大学)に依頼し、蛍光プローブを合成し、反応性を検証した。予測通り、本蛍光プローブがヒドロキシルアミンとも反応することを見いだし、現在、B. sinica細胞内でのヒドロキシルアミン代謝を蛍光顕微鏡観でin-vivo観察することを試みている。
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Chemosphere
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