研究実績の概要 |
本研究は北海道において患者数増加が懸念されるコリノソーマ症(鰭脚類を終宿主とする海産寄生虫Corynosoma spp.によって引き起こされる人獣共通寄生虫症)について、感染源となる魚類(延長中間宿主)を網羅的に特定し、海域や季節性を考慮したリスク評価に結びつけることを目的とする。 次年度は、初年度に引き続き、身近な生鮮魚および市場に出回らない魚種を幅広く検査した。これまでの研究活動によって鰭脚類寄生種として北海道周辺には3種(C. strumosum, C. villosum, C. semerme)が分布し、基本的にはC. s.種が沿岸魚類に幅広く寄生している実態が明らかとなった。トドが来遊・定着する海域の近傍ではC. v.種が次点で優先し、C. s.種との混在が前年度同様認められた。本研究の結論として、特に終宿主となる鰭脚類が周年見られる海域において、本属寄生虫は普通種として沿岸魚類に偏在しているとの判断を得た。比較的高い寄生レベルを鑑みると、今後多様化するであろう未利用魚の生食には本寄生虫の感染リスクが伴うことを徐々に周知していく必要がある。本研究における成果の一部は、現在、共著論文として国際誌に投稿中である。 また、地元漁業者に対する情報共有のために講演会を開催し、特に若手漁業者における知識普及に努めた。成果公表の方法について未だ模索中ではあるが、漁業者ベースでの啓発活動を継続し、現場における理解を求めていく予定である。
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