研究課題/領域番号 |
17K15313
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
河東 康彦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 研究員 (90634220)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マダイイリドウイルス / 培養細胞 / アポートシス / ワクチン / ウイルス複製阻害 |
研究実績の概要 |
マダイイリドウイルス病のワクチンは、魚類培養細胞により増やしたウイルスをホルマリンで不活化してワクチンとしているが、培養細胞でのウイルス産生効率が低いため製造コストの上昇につながっている。一方、培養細胞でのウイルス複製過程や細胞のウイルス複製阻害要因を明らかにできれば、効率の良いワクチン製造のヒントになる可能性がある。本研究ではマダイイリドウイルスの高効率産生系の確立を目指し、培養細胞におけるウイルスの複製阻害要因を、アポトーシスを中心として検討することを目的としている。最終的にはウイルス産生に有利な細胞の形質を明らかにすることで、培養細胞をゲノム編集技術により改変し、ウイルス産生能力の高い培養細胞株の作出につなげていく。 本年度は、平成29年度に実施したウイルス感染細胞におけるRNAseqの結果を詳細に解析した。その結果、Casepaseを始めとするアポトーシス関連遺伝子の発現変動が認められたが、大きな発現変動が認められたのは一部の遺伝子に限られていた。一方、ウイルス複製阻害に関与していると思われる他の遺伝子で大きな発現変動が複数認められた。これらの情報を元に、アポトーシス関連から4種類、インターフェロン関連から3種類、RNA干渉関連から2種類、エンドサイトーシス関連から1種類、その他から1種類の遺伝子をノックダウン試験のために選定した。また、ノックダウン試験における陽性対照として、マダイイリドウイルスの遺伝子に関しても4種類(アポトーシス関連、主要カプシドタンパク質、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ)選定した。各遺伝子について3種類のsiRNAを設計して人工合成し、ノックダウン試験の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、ノックダウン試験のためにウイルス感染細胞における宿主関連遺伝子の発現変動解析を実施した。本研究で複製阻害要因のターゲットとして挙げているアポトーシス関連遺伝子の変動が認められたものの、一部の遺伝子に限られており、その他の複製阻害要因に関与すると思われる遺伝子でも大きな変動が認められた。このことから、ノックダウン試験においては、アポトーシス関連遺伝子だけにターゲットを絞らずにsiRNAの設計を実施した。siRNAを人工合成したものの、培養細胞におけるノックダウン試験を実施できていないために進捗状況は遅れているとした。また、本研究の最終目標をマダイイリドウイルスの培養細胞における複製阻害要因の解明と、それに続く遺伝子ノックアウトによる有用細胞の作出としていることから、ノックダウン試験の結果によっては当初の研究計画を変更し、解析の対象をアポトーシス以外の遺伝子に変更する可能性もある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に作製したsiRNAを用いて、培養細胞におけるノックダウン試験を実施し、ウイルス感染時におけるウイルス複製阻害要因の解明を進める。当初の計画では、次年度においてマダイイリドウイルスが持つアポトーシス関連遺伝子と相互作用する宿主タンパク質の同定を予定していたが、これまでの結果からウイルスの複製阻害要因としてアポトーシスのみが関与しているわけではない可能性が示唆されている。本研究では、効率的なワクチン製造を命題とし、マダイイリドウイルスの培養細胞における複製阻害要因の解明を目指していることから、次年度ではアポトーシス関連遺伝子にこだわらないsiRNAを用いたノックダウン試験により、培養細胞におけるウイルス複製阻害要因の究明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していたsiRNAを用いた培養細胞におけるノックダウン試験が実施できなかったため残額が生じた。翌年度に予定している当該試験において、本助成金を使用する予定である。
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