研究課題/領域番号 |
17K15315
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
下瀬 環 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, 主任研究員 (70524792)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セリ単価 / 肥満度 / 漁獲制限体長 |
研究実績の概要 |
沿岸性水産重要魚種の価格形成に関する基礎情報を収集するため、前年度に引き続き、週4~5回のセリ市場調査を実施し、水揚げ物の種と大きさなどを記録した。前年度までに実施したブダイ科魚類とハタ科スジアラ属魚類に加え、ハタ科バラハタ属2種とマハタ属4種で、魚体の大きさ上昇に伴うセリ単価の変化を明らかにした。すべての種で体重増加に伴うセリ単価の上昇が確認でき、一部の種では大きすぎると単価が下がることを明らかにした。これらの成長に伴うセリ値上昇の情報と、過去に知見のある生活史情報(最高年齢・成長パラメータ)を用い、ブダイ科3種とハタ科8種で適切な漁獲制限尾叉長を推定した。その結果、現在八重山地域で設定されている漁獲制限体長は、大型種に限り、引き上げるべきであると考えられた。 大型種である、ハタ科スジアラ属3種、バラハタ属2種、フエフキダイ科フエフキダイ属2種では、昨年度に引き続き、セリ市場で個体ごとに尾叉長、体重、電気抵抗値を計測・記録した。いずれの種でも、季節的な肥満度(体重/体長^3)の変化、電気抵抗値の変化が見られた。沖縄の市場における漁獲物の冷却度合は漁業者によってばらつきがあり、温度の影響を受ける電気抵抗値をそのまま脂の乗りの指標として利用することは適切でないと推測された。一方で肥満度は、産卵期や魚体の大きさとの関連が大きく、個体の質を反映する指標になりうることが示唆された。 生活史情報のない水産上重要な沿岸魚種であるフエフキダイ属2種については、標本収集を継続し、年齢査定、成熟度判定のために、耳石・生殖腺を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市場における調査は、予定より高頻度で順調に実施しており、生活史情報の不明な2種の標本収集も順調である。個体情報の詳細な調査対象とした5種については、電気抵抗値を用いた体脂肪率推定が沖縄県の市場では困難なことが明らかになった。一方で、簡易的に計算できる肥満度により、身質の推定がある程度できる可能性があることが分かった。沿岸魚類のセリ値形成と身質評価に関連して、学会で2件口頭発表した。ブダイ科魚類のセリ値形成に関する論文が学術雑誌に受理・掲載された。 ブダイ科魚類のセリ値に大きく影響する寄生虫について、寄生虫の専門家と協力し、寄生虫の種類、宿主の種による寄生率の違いについてまとめ、学術雑誌に論文を投稿した。この寄生虫がブダイ科魚類に与える生態的な影響についても1仮説を提唱し、学会で1件発表した。
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今後の研究の推進方策 |
ブダイ科とハタ科の主要な数種で適切な漁獲制限体長を推定できたので、次はフエフキダイ科で推定し、沿岸魚類に広く適用可能な数値や簡易的な計算方法を検討する。フエフキダイ科2種で、年齢・成長などの基礎的生活史情報を明らかにする。推定した適切な漁獲制限体長について、八重山漁協内の資源管理委員会で漁業関係者向けに紹介し、資源管理を適切に進めていくうえでの参考情報としてもらう。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた学会参加のための出張ができなくなったため、次年度使用額が生じた。次年度の標本購入費用、論文投稿費に充てることを計画している。
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