研究課題/領域番号 |
17K15323
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
長澤 貴宏 九州大学, 農学研究院, 助教 (70775444)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 補体 / 免疫 / 魚類 / 炎症 / C5a / アナフィラトキシン |
研究実績の概要 |
H29年度は主に魚類の補体成分C5aの機能を亢進または抑制する研究ツールの準備として、大腸菌を宿主とした組換えゼブラフィッシュC5a(zfC5a)および抗zfC5a抗体の作製と機能の確認を行った。当初6xHisタグを融合させた完全長のzfC5aを発現させ、分子量約140,000の可溶性のタンパクとして得ることが出来たが、活性測定試験の結果から正しい立体構造を取っていない可能性が考えられたため、GSTタグとの融合体として新たに組換えタンパクを作製し、これを大腸菌内で発現させた結果、分子量約340,000の組換えzfC5aを得ることができた。この組換えzC5aをゼブラフィッシュ腎臓由来白血球に対し反応させたところ、ケモタキシスチャンバー下層への細胞の遊走がみられ、組換えタンパクがアナフィラトキシンとしての活性を有していることが示唆された。 また作製した組換えzfC5aを抗原とし、ウサギに免疫することで抗zfC5aウサギ抗血清を作製した。得られた抗血清をウエスタンブロット法によりザイモサンで活性化(C5aフラグメントの産生)させたゼブラフィッシュ血清に対し反応させたところ、分子量約10,000のゼブラフィッシュC5aのサイズと一致するバンドが検出され、抗血清のゼブラフィッシュC5aへの反応性が示唆された。更にC5aレセプター(C5aR)欠損ゼブラフィッシュ系統を作製する準備段階として、CRISPR/Cas9システムの手法を確立し、チロシナーゼをターゲット遺伝子とした予備試験を行い、欠損魚を得ることができた。現在C5aR欠損系統作製のための標的配列を検討中であり、これを用いてC5aR欠損魚の作製に取り掛かる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り組換えzfC5aの作製および抗zfC5a抗体の作製を完了させており、今年度からそれらを用いて生体内でのC5a活性に関する実験を行う予定である。またC5aR欠損魚の作製についても予備試験により作製手順を確認しており、速やかに取りかかる準備が出来ており、今年度中にそれらの欠損系統を確立できる見込みのため、概ね予定通りに進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、前年度に作製した組換えzfC5aの活性を更にin vitroの白血球遊走試験、活性化試験で検証し、生体への投与試験へと移る。作製したGST融合zfC5aは白血球の誘引活性を有していたが予想される活性よりもやや低かったため、今後精製方法を検討し、また当初作製した6xHisタグ融合zfC5aについてもリフォールディングを試みより高いアナフィラトキシン活性を有する組換え体の作製に務める。 また抗zfC5a抗体に関してもこの組換えzfC5aを用いたアフィニティ精製を行うことで、力価の高い抗体溶液とし、in vitroで組換え体への活性阻害作用を確認した上で生体への投与量を検討し、C5aの抑制試験を行い、免疫、炎症反応におけるC5aの寄与を明らかにする。またC5aレセプター欠損魚作製についても速やかに取り掛かり、上記の組換え体及び抗体との組み合わせによりC5aの機能の全容解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
活性を有した組換えタンパクの作製に予定よりも多くの時間を取られたため、それらを用いたin vivoでの実験を次年度にまとめて行うことにした。また大学施設の移転を挟む影響で新規の飼育設備設置の大部分を次年度に回したことから、その費用として次年度の割合が当初の予定よりも多くなっている。H30年度はそれらの組換え体、抗体を用いた試験と受容体欠損系統魚の作製、飼育施設の拡充に繰越額を使用する予定である。
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