酪農経営にとって、飼料価格の上昇や労働時間の過重が大きな課題となっている。都府県の生乳生産量が減少し、全国の生乳製品の需給が不安定となっている中で、低コストな自給飼料の効率的な生産・作業体系の確立、及び酪農業の生産性向上が強く望まれている。そのような中、混合飼料生産組織(TMRセンター)による高品質かつ省力的な飼料生産が注目されている。本研究の目的は、全国121件(うち北海道59件、平成26年時点)存在し、現在も急速に増加しているTMRセンターに着目して、飼料用農地の管理データを統合し、適切な飼料用農地の利用・管理・収穫作業を導出することである。 先進的なTMRセンター経営が見られる根釧地方を対象として、本研究では、2010年~2016年の、根釧地方のTMRセンターを中心とした地域の衛星画像解析を行い、牧草地、更新1年目の草地(以下更新草地)、飼料用トウモロコシの分布を明らかにした。また、各圃場の区画を画像解析によって明らかにし、画像解析後のデータを公刊の地形図、土壌、気象、集落界や農業センサスと結合しGISデータを整備した。これらの統合されたデータを用いて草地更新や作物作付けについてパネルデータ分析や空間計量経済モデル推定を行い、普及要因・決定要因を明らかにした。地域全体を見ると、草地更新採択圃場やその農家には空間的な偏りがあり、初期時点で更新が進んでいる農家では、その後も積極的に草地更新がなされていることが明らかになった。特にTMRセンターでは、多くの圃場を統一的に活用することで、草地更新や飼料用トウモロコシ作付けが積極的であることが確認された。
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