研究課題/領域番号 |
17K15330
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 麻里子 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特任研究員 (10555105)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ザンジバル / ダガー産業 / 漁業規制 / 資源保全 / タンザニア連合共和国 |
研究実績の概要 |
平成31年度(令和元年度)は、現地調査を1回行った。タンザニア連合共和国のザンジバルにおいて、ダガー漁とその加工産業の調査を行った。2019年1月にタンザニア本土政府がダガー漁に広く使われている漁網を使用禁止とし、タンザニア本土のインド洋沿岸域で畜産漁業省および警察、軍などが一斉に漁網の摘発、没収を行った。没収された漁網は焼却処分され、多くの漁師がダガー漁を行うことができなくなった。タンザニア本土とは異なる法律・規制が適用され、行政組織も異なるザンジバルでは、ダガー漁は通常通り行われ、漁網の摘発や没収は行われていない。そこで、タンザニア本土のインド洋沿岸の街タンガから、多くの漁業者、ダガー加工業者、加工産業従事者がザンジバルにビジネス拠点を移しに来た。 現地調査において、本土から来たダガー産業従事者から聞き取り調査を行い、タンザニア本土における取り締まりの実態や、本土とザンジバルにおける各種の規制、課税システムの違いなどを解明することができた。また、ザンジバルにおけるダガー産業従事者が急増したことで、調査地におけるダガー水揚量が大幅に増え、ザンジバルで元々ダガー産業を行っていた人々にも様々な形で影響が生じていることもわかった。現金稼得機会の増加という良い面だけでなく、水揚の急な増加により、加工作業に時間がかかり、加工後のダガーの品質が低下するなどの負の影響も確認できた。 フィールドワークで得た最新のタンザニア本土およびザンジバルにおけるダガー漁とダガー加工産業の実態について、国際漁業学会で口頭発表を行った。学会発表を通じて、多くの研究者と情報交換をすることができた。今後は、タンザニア本土における規制が恒久的に続くのか、続くとすればザンジバル側で講じられるべき対策は何か、引き続き調査を行っていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年1月に出産し、第一子を育児しながら研究を行っているため、これまでに比べて現地調査に行ける頻度が下がり、調査期間も短くならざるを得なくなった。そのため、調査項目によっては計画通り行えていないものもある。また、成果発信についても十分に行えていない部分がある。しかしながら、研究期間の延長により、当初の研究計画に示していた調査項目を今後、延長した研究機関で着実に行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査の頻度が下がったとはいえ、情報通信機器の発達により、ザンジバルのインフォーマントとは日本に居ながら情報交換できる状況が整いつつある。これまでは現地で紙媒体で回収していたデータを、SNSや電子メールを通じて回収が可能なものについては、電子的なやり取りで回収し、随時分析していく予定である。現地調査も可能な範囲で継続し、電子的なやり取りの方法について現地のインフォーマントに十分な説明を行い、新たな手法を模索しながら研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
育児のため、海外調査の回数が制限され、また現地調査の期間も短くならざるを得なかったため、旅費の項目で多くの次年度使用額が生じた。また、国内学会や研究会への参加頻度も低下せざるを得なかった。現地調査を頻回に行うことで、研究協力者への謝金等も発生するが、現地調査が計画通り行えなかったため、人件費・謝金の項目でも多くの次年度使用額が生じた。
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