研究実績の概要 |
明治期における産業創出条件の検討、戦略の理論的検討、現代農山村コミュニティにおける新産業創出の実態把握をおこなった。 研究対象地において明治期に勃興し、昭和初期まで約40年間経営を継続したO製糸場の展開過程の分析から、現代における六次産業化にも適用可能な4つの基本条件を導出した。それらは第1に、地域住民が主体となり現状への問題意識と将来ビジョンを持って事業に取り組むこと、第2に、地域資源を探索し、発見すること、第3に、地域人材の活用、第4に、地域間連携である。これら4条件を産業創出戦略にどのように位置づけるかが今後の検討課題である。 戦略の理論的検討では、主として野中ら(2005) 、Mintzberg(2009)を参照した。野中らが指摘するように、戦略とは他者とのダイナミックな相互作用を把握し、そこで生成する矛盾を綜合するものであり、こうした戦略を農山村コミュニティが持ちえたかどうかの検証が今後必要になる。またMintzberg(2009)によれば、戦略はPlan, Pattern, Position, Perspective, Ployの5つの側面から定義されるが、特に本研究では、過去の事例を対象にすることから、特にPattern(経路)、Perspective(視座)、Ploy(策略)に着目した分析が必要である。 現代農山村コミュニティにおいては種々の事業創出が試みられているが、十分な戦略を備えているとは言い難い。できれば実施以前の段階で他者との相互作用、実施に伴う摩擦、矛盾への対応が考慮される必要がある。また実施段階では、予期せぬ変化に臨機応変に柔軟に対応する必要がある。
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