我が国では、農業の近代化や農山村における過疎高齢化等によって、農業生態系の劣化が進行している。このような中、生態系保全型農業は、農業生態系の適切な保全と利用を行うための有効な手段であり、地域農業の持続性を高める観点からもその普及・発展が望まれる。 生態系保全型農業の持続性を高めるためには、まず環境面においては、保全対象となる生物種や生態系の特定にはじまり、それらの保全活動の実施や、保全活動の定期的な効果検証・改善が重要となる。経済面においては、保全活動に関わる農地由来の農産物販売による農業者の収益確保が重要となる。保全活動等で多くのかかりましが生じる場合には、それを補うためのブランディングによる高収益の確保も必要となる。ここで、生態系の保全活動等の配慮は、農産物の品質面(味・形状等)には通常影響を与えないため、農産物の購入者・支持者(候補含む)に対して、生態系保全型農業の特徴や意義を如何にして伝えるかが重要となる。販路の選定にあたっては、農地周辺地域に加え、都市部のグリーンコンシューマーを対象とすることも一考であり、その際には、都市部の流通事業者の協力等を得ることが効果的と思われる。社会面においては、生態系保全型農業に直接関わる農業者のみならず、活動を行う地域の住民等の理解・支持の獲得が重要である。 また、活動初年度から数年間においては、まずは環境面での活動を中心的に行い、生態系配慮型の農業生産技術を獲得した後に、関連農産物の販売・マーケティング活動を進めることで、生態系保全型農業や関連農産物のブランド化を図ることが期待される。そしてさらには、地域への活動の浸透や活動規模の拡大に向けた検討・実践を行うことが望ましい。
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