2022年度は、Vinh Long省で展開しているマンゴー等の産地振興と農民組織について調査を行い、住民を巻き込んだ域内流通の展開の兆しを確認した。また、2021年度、近代的流通の動向を明らかにしたが、ハノイ市内においても小売店店舗担当者等から聞き取りを行い、発注の方法・集荷システム等に関する情報収集を行った。また、HCM市農工省、ベトナム南部で店舗を展開している近代的小売3者のバイヤーから、青果物の買付、産地支援等に関して聞き取りを行い、各小売店の販売戦略等について情報収集を行った。 研究全体を通して実施した研究は以下の通りである。まず第1に、ベトナム北部ハノイ近郊の工業団地周辺の外食提供企業と食材調達の動向を明らかにした。第2に、南部カントー市近隣の工業団地近隣の外食提供企業で聞き取り調査を行い、同様に食材調達の動向を明らかにした。最後に、フードシステム全体に影響を与えると考えられる近代的小売業のベトナム市場への参入について、統計資料と現地での聞き取り調査から明らかにし、その青果物の調達構造について聞き取りを行った。 これにより、以下のことが明らかになった。1点目として、ベトナム北部では、1企業当たりの事業規模が小さく、食材の調達も個別対応になっている一方で、南部ではセントラルキッチンの設置が行われている企業もあり、調達も本部一括仕入れとなっている企業が出てきていることが明らかになった。2点目として、南部では生産者からの直接購入より特定の卸売業者との取引が多くなっており、取引が集中する傾向にある。こうしたことから、給食企業の成長が農産物の取引量の集中と、地理的な広域性を促進させている可能性があることが示唆された。最後に、ベトナム国内で展開する近代的流通の動向も明らかにした。
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