研究課題/領域番号 |
17K15340
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤原 敬大 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20637839)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生産林 / 人工林 / 産業造林 / コミュニティフォレストリー / アグロフォレストリー / 土地改革 / 社会林業 / インドネシア |
研究実績の概要 |
本研究は、インドネシアにおける規模と保有形態が異なる人工林の比較分析を行い、持続的な熱帯人工林の条件について検証することを目的としており、①コミュニティ人工林(HTR)、②産業造林(HTI)、③私有林(HR)の3つの事例研究で構成される。平成30年度は下記について研究を行った。 ②産業造林(HTI)の事例:文献レビューやNGO関係者らとの合同勉強会を通じて、産業造林が抱える問題について分析し、土地が大規模に囲い込まれることによって生じる土地紛争や富の不平等、熱帯林の管理においても近年重要になってきている非政府市場駆動型ガバナンスの課題を考察した。またこれらの産業造林に関する研究成果に関する本の原稿の執筆作業を進めた。 ③私有林(HR)の事例:インドネシアでは植林する際に樹木の間に農作物を植えるアグロフォレストリー(=トゥンパン・サリと呼ばれる)が広く普及している。一方でトゥンパン・サリは、樹木が成長するに従って樹冠が鬱閉し、植林後3年ほどで日射量不足のため農作物が育たなくなり、農民たちの農業収入も途絶えてしまうという問題を抱えている。この技術的な問題に取り組むために、チーク人工林において日陰でも育つこんにゃくの栽培を近年始めたジョグジャカルタ特別州グヌンキドル県バニュソチョ村を訪問して地域住民へインタビューを行ない、こんにゃく栽培の現状と課題を把握した。またバニュソチョ村との事例比較を行なうためインドネシアの研究協力者と一緒に群馬県甘楽郡下仁田町を訪問し、こんにゃく栽培農家へのインタビューを行ない、インドネシアの農民たちが安定的に農業収入を得られ、長期間にわたって植林した樹木を保育するためのトゥンパン・サリの方法について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、①コミュニティ人工林(HTR)、②産業造林(HTI)、③私有林(HR)の3つの事例研究で構成される。②産業造林(HTI)、③私有林(HR)に関しては、おおむね順調に進展している。一方で①コミュニティ人工林(HTR)の事例に関してはフィールドワークを実施するために必要な調査許可の取得手続きに時間を要しており、半構造化インタビューを用いた世帯調査が出来ておらず、当初の計画よりも遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
調査許可取得後、リアウ諸島州におけるコミュニティ人工林(HTR)協同組合の組合員を対象に半構造化インタビューを用いた世帯調査を行ない、コミュニティ人工林(HTR)政策が地域住民の生計に与えた影響について分析を行う。その上で①コミュニティ人工林(HTR)、②産業造林(HTI)、③私有林(HR)の3つの事例を比較し、持続的な熱帯人工林の条件について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査許可の手続きに時間を要しており、当初計画したコミュニティ人工林(HTR)協同組合の組合員を対象とした半構造化インタビューが実施できなかった。次年度使用額については、調査許可取得費とコミュニティ人工林(HTR)に関するフィールドワークを実施するための旅費として使用する。
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