研究課題/領域番号 |
17K15342
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
濱上 邦彦 岩手大学, 農学部, 准教授 (20571699)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アオコ / 藍藻類 / 移動速度 / 現地観測 / 低次生態系モデル |
研究実績の概要 |
本研究ではアオコの発生する閉鎖性水域内の栄養塩動態に関する検討を行うことを目的とする.とくに水鳥が多数飛来する閉鎖性水域を対象に,糞尿による栄養塩負荷の増大も考慮した,農業用貯水池の多面的機能を総合的に発揮する管理手法を検討する.本研究では水鳥の集団飛来による栄養塩動態への影響について現地観測に基づく水質予測モデルを構築する.さらに,アオコの発生する夏季を対象に短期連続観測を行い,水温成層状態の形成・消失過程と,藍藻類の浮上・沈降過程の関係について検討を行うとともに水域内流動モデルと組み合わせることで,アオコ発生制御を目的とした夏季における密度成層場の藍藻類の挙動予測モデルを構築する. まず,年間を通した現地観測によって,水鳥が飛来する貯水池を対象に,閉鎖性水域内の栄養塩動態への影響に関する検討を行った.調査地は岩手県盛岡市内の高松公園内にある高松の池である.高松の池は,水田灌漑用のため池であるとともに,親水公園としての役割を有する,水深が1~3mと浅い閉鎖性水域である.夏季から秋季にかけてはアオコの発生が見られ,その改善が求められている.また年間を通して,数種類のカモ類が生息しており,冬季には白鳥やカモ類が多く飛来するため,本研究課題の目的に合致した水域である.その結果,藍藻類の沈降速度・浮上速度は安定した水温成層下では減少することを示した.また,水質分析の結果を重ねて検討を行った結果,栄養塩分布の変動と藍藻の挙動に相関がみられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水温成層化したため池における藍藻類の挙動について検討するため,短期間での詳細な分布変動を捉える現地観測を行った.その結果,藍藻個体数のピーク値水深の移動距離から求めた藍藻の移動速度の変化について検討した結果,水温成層と藍藻の挙動の関係について,混合が強くなる時間に藍藻が浮上した後,成層が強い場合は密度界面まで沈降し,成層が弱い場合は下層まで沈降することを示した.さらに水温成層が強いほど浮上速度,沈降速度が小さくなることを示した.現地観測をさらに重ねることで解析モデルのキャリブレーションデータを今後も追加する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
現地観測結果より得られたパラメタを基に,水鳥が飛来する閉鎖性水域におけるアオコの発生予測シナリオを構築する.水質モデルに関しては生産者,消費者,分解者とエネルギー資源からなる低次生態系モデルを採用する.その際,水面からの境界条件として水鳥からの糞尿の負荷を,底泥からの境界条件として栄養塩の溶出速度を実験結果よりパラメタ化する.構築したモデルを高松の池に適用することで,年間を通したアオコ発生シナリオを作成する.また,今年度の検討より,夏季におけるアオコの発生は水温成層場の形成に大きく影響を受けることを.アオコの主要因である藍藻類は浮力性を持ち水面付近で光合成を行い,夜間には沈降するサイクルを繰り返すが,水温成層場では密度界面の存在によって藍藻類の沈降が抑制されるため,これがある程度の期間継続されるとアオコの発生・維持が増進される.浅い閉鎖性水域では日サイクルでの水温成層の形成・消失過程を繰り返すため,その水温鉛直環境はアオコの発生特性に大きく影響を及ぼすと考えられる.そこで,今年度も条件の異なる時期における短期集中の現地観測を行うことで,水域内の水温成層状態の形成・消失過程と,藍藻類の浮上・沈降過程を測定し,その相互関係について検討を行う.
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