本研究ではアオコの発生する閉鎖性水域内の栄養塩動態に関する検討を行うことを目的として、とくに水鳥が多数飛来する閉鎖性水域を対象に,農業用貯水池の多面的機能を総合的に発揮する管理手法を検討する.本研究では水鳥の集団飛来による栄養塩動態への影響について現地観測に基づく水質予測モデルを構築する.さらに,アオコの発生する夏季を対象に短期連続観測を行い,水温成層状態の形成・消失過程と,藍藻類の浮上・沈降過程の関係について検討を行うとともに水域内流動モデルと組み合わせることで,アオコ発生制御を目的とした夏季における密度成層場の藍藻類の挙動予測モデルを構築することを目指す研究である。 藍藻類はガス胞を持ち浮力調節を行うことで、日周期的な鉛直移動を行うことが知られている。しかし、藍藻類の鉛直移動については様々な生態学的要因や水理学的要因が複雑に作用していると考えられ、実際のフィールドでの鉛直移動特性に関する見解は一様でない。そこで、ため池において短期的な藍藻類の挙動について知見を得ることを目的とし、主に水理学的要因や栄養塩分布に着目して検討を進めた。その結果、栄養塩分布と藍藻の挙動に明確な相関は示されず、水温成層場の形成・消失過程が支配的であること、また群体の大きさが移動速度に影響を及ぼすことが示された。さらに、藍藻類の鉛直移動速度は群体の大きさにより異なるという点に着目し、藍藻類の群体面積および細胞数を実際に計測して群体形成と鉛直分布特性の関係性を検討した結果、藍藻の群体は水中で拡散することなく移動し、表層付近では更に大きな群体を形成することを示した。
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