研究課題/領域番号 |
17K15349
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
正田 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 主任研究員 (30549845)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ため池 / 土砂流入 / 模型実験 |
研究実績の概要 |
近年,時間雨量50mm 以上の短時間強雨の発生件数が増加し,全国で土砂災害が頻発しており,農業用のため池においても多くの被害が報告されている。ため池で土砂を受け止めた場合,ため池が土砂災害防止機能を発揮することが期待されるが,土石流流入時のため池貯水部や堤体に関する研究はほとんど実施されていないのが現状である。 本年度は,ため池への土砂流入時における影響を評価することを目的として,ため池において流入土砂の速度が最も大きくなる斜面直下部における土砂流入に着目して,土砂を斜面上端から流下させる室内模型実験を実施した。流下材料・質量・含水比・密度等を変えることでのため池での速度や流体力等についての検証を行った。流下物の試料には以下の4種類を用いた。災害現場でため池に流入した土砂(以下,まさ土)と,その最大粒径と最小粒径に近い珪砂(3号珪砂・7号珪砂)を用いた。また,数値実験との比較のために,粒径や密度が均一な材料である鉛玉を用いた。その結果,密づめにすることで,流下する土砂が土塊となって流下し,最大荷重は密づめの方が緩づめより大きくなった。含水比が上がることで最大荷重値と残留値の差が小さくなり,明確な最大値のピークが現れない。 ため池堤体は前法で1.5~3割ほどの勾配で,砂防堰堤と比較すると緩勾配の斜面となると考えられる。上述の模型実験では,堤体に模した勾配を一様としたが,堤体勾配が変化することによる作用荷重への影響について数値実験により検討した。その結果,斜面勾配が緩いケースは多くの粒子が堤体を遡上した。最大荷重の結果とあわせて考えると,堤体勾配の増加により速度が抑えられたことにより,堤体に対して大きな荷重が作用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ため池において流入土砂の速度が最も大きくなる斜面直下部における土砂流入に着目して,土砂を斜面上端から流下させる室内模型実験を実施した。流下材料・質量・含水比等を変えることでのため池での速度や流体力等についての検証を行った。流下物の試料には以下の4種類を用いた.災害現場でため池に流入した土砂(以下,まさ土)と,その最大粒径と最小粒径に近い珪砂(3号珪砂・7号珪砂)を用いた。また,数値実験との比較のために,粒径や密度が均一な材料である鉛玉を用いた。その結果を整理し,砂防基本計画策定指針における土石流流体力の式と比較するため,各ケースにおける最大荷重について整理を行った。以上,予定通り研究は進行している。 ため池堤体は前法で1.5~3割ほどの勾配で,砂防堰堤と比較すると緩勾配の斜面となると考えられる.上述の実験では,堤体に模した勾配を一様としたが,堤体勾配が変化することによる作用荷重への影響について数値実験により検討し,予定通りその結果を整理した。また,今後規模を大きくした場合の実験に対応したパラメータについても検討した。
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今後の研究の推進方策 |
ため池には砂防設備と異なり,堤体の上流側に貯水池があり貯水池の影響を明らかにすることも重要である。また,これまで小規模な実験を行っていたが,規模を大きくした場合に現象の相違がないか確認することが重要である。 来年度以降は,過去の土砂災害によるため池の被災事例において,ため池上流部でため池貯水容量の約1.9倍~約3.8倍の土砂が発生したが,土砂を貯水池内で受け止めた.土砂災害時の土砂の流入に関して,以下について検討予定である。模型貯水容量に対して2倍の土砂を流下させることで,貯水池に対する影響を確認する。貯水のない砂防堰堤を対象とした研究との比較のため,斜面直下に壁を設けて貯水の有・無の実験を行う。また,災害後の調査で崩壊および流下した土砂量については試算できるものの,流下量の時系列的な変化であるハイドログラフについては不明である。そこで,土砂の流下回数を変えた実験を行い,比較を行う。さらに,ため池貯水容量を増やしたケースについても貯水有・無で実験を行い,斜面から離れた箇所での荷重の変化について確認を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験のデータ整理作業が当初予定より安くなったため,繰越しが発生した。 繰越し金は,今年度予定している実験業務で使用する予定である。
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