近年,時間雨量 50mm 以上の短時間強雨の発生件数が約 30 年前の約 1.4倍に増加し,全国 各地で水害・土砂災害が頻発しており,甚大な被害が発生している.平成 26 年 8 月豪雨では, 広島市北部や近畿地方等を中心として大雨が発生し,いずれの場所でも農業用ため池が,土石流や崩壊土砂の流入によって被災した . 土石流等による土砂災害を防止する施設としては,砂防設備があるが,想定を超える豪雨においては,砂防設備の設置されていない斜面での土砂災害により,ため池の被災が発生することも想定される. 土砂災害時におけるため池の機能評価につなげることを目的として,本研究では,ため池特有の条件として,ため池流域の渓床が緩勾配であるため想定される土砂の流入速度が遅いことや,ため池堤体が土構造物であるため堤体勾配が緩勾配であることが挙げられる.これらを踏まえた模型実験・数値解析を行った.ため池への土砂の流入については,土石流流体力の式中にある,流入土砂の密度や速度,流下中の深さを計測した.土石流がため池に流入した際の土砂の挙動を再現した上で堤体に作用する荷重について検証した. その結果,(1)堤体に作用する荷重と時間の関係、(2) 最大荷重作用時と作用後の土砂堆積・流下状況、(3)最大荷重作用時の流体力による荷重と堆積物による荷重の比較 (4)解析によるため池堤体勾配が土砂流入時に与える影響について明らかにした. 本研究では貯水のない場合について主にとりまとめを行ったが,堤体の被災要因としては堤体越流が主な要因と想定されることから,今後は土砂流入に伴うため池貯水池内の水位上昇や堤体での越流水深に対する影響について研究展開を行う.
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