研究課題/領域番号 |
17K15351
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐合 悠貴 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (20648852)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 養分吸収モデル / 根域環境 / 養液栽培 / 養水分吸収 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,養液栽培における根域の物質移動現象を解析し,持続的かつ生産性の高い肥培管理法を提案することである。この目的を達成するために,本年度(2年度目)においては,根のイオン吸収のモニタリングとモデル化を進め,さらに余剰廃液削減方法について検討した。 課題Ⅰでは,人工光型植物工場において数品目の作物(リーフレタス,サラダナ,イチゴ,トマト,ナス,ピーマン)を育成し,様々な環境の下で養水分吸収速度を評価した。測定時に異なる条件に制御した環境としては,昨年度までに実施した養液温度および養液濃度に加えて,根域酸素濃度についても検討した。 課題Ⅱでは,培地耕条件下における根域環境の解析と調節法の検討を目的として,培地耕条件下における根の養水分吸収速度と培地含水量および酸素量との関係を解析した。培地内の環境は,前年度までに構築した計測システムを用いて測定した。培地耕条件下における養分吸収速度に対する根域環境の影響は,既存の水耕栽培条件下で構築した蒸散統合型養分吸収モデルを応用することで表現できることを明らかにした。 課題Ⅲでは,余剰廃液の節減に向けた肥培管理法の開発を目的として,根の生理モデルに基づいた根域養分動態のシミュレーションを試みた。本年度では窒素に着目した。根における窒素吸収速度に加えて,植物の成長速度および代謝速度と環境との関係をモデル化することで,根域の養分動態をより精度良く,長期間に渡ってシミュレーション可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題Ⅰおよび課題Ⅱでは,培地耕条件下における養水分吸収と各種環境要素との関係を測定し,モデルにより解析した。これらの測定の結果,それぞれの環境が養水分吸収に与える影響を定量化することができた。また,培地内水分含量および培地内水分の溶存酸素含量が養水分吸収に与える影響を評価できた。これらの結果は,培地耕条件においても,簡易に評価可能な定量的指標を用いて根の養分吸収能を把握することが可能であることを示唆しており,根域環境の統合的制御の実現に向けた知見を得ることができた。 課題Ⅲでは,当初の目的の一つである肥培管理の最適化に応用可能な,根域養分動態のシミュレーションモデルを構築することができた。 これらのことから,現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでに実施した,培地耕条件下における環境と植物の養分吸収との関係のモデル化をふまえ,より最適な培地環境の制御条件の探索を実施する。特に,これまでの研究の過程で,養分吸収速度に加えて,植物の成長速度および代謝速度に関するモデルを統合することで,根域の養分動態を長期シミュレーション可能なモデルを構築できた。このモデル駆使して,肥料として与えた窒素を植物に効率的に全量吸収させ,栽培時に余剰な養液廃液を発生させない肥培条件を求め,その有効性を検証する予定である。
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