青果物のおいしさには、咀嚼時のかたさなどの品質特性が大きく影響する。特に青果物の加工過程においては、それらの品質特性が大きく変化するため、そのモニタリングが可能となれば、高品質な青果物の加工条件選定に有用である。 電気インピーダンス測定は、簡便かつ低コストでのモニタリング技術として着目され、青果物の電気特性解析について多くの研究がなされてきた。また、電極界面や細胞膜の性質を鑑みると、青果物組織の電気特性解析を行う際には、幅広い測定周波数帯における周波数特性解析が必須である。しかしながら、加工、特に加熱中における青果物組織の電気特性を解析した例は少なく、未だ固定周波数による解析も散見されるのが現状である。 本研究においては、青果物組織の電気インピーダンス周波数特性を解析することにより、加工中における組織破壊のモニタリングを行い、また、青果物の品質特性として有用な力学特性などとの関係性を整理することで、電気による加工青果物の品質特性評価技術の確立を目指す。 令和元年度においては、主に低温スチーム加熱による青果物の細胞破壊と力学特性、ジューシネスの関係性について電気化学的に解析した。加熱前後におけるリンゴ果実の細胞膜破壊程度を示す電気的指標と、力学・ジューシネス特性の間には相関関係がみられ、電気的指標からの力学特性とジューシネスの推定が可能だった。また、カット加工されたリンゴ果実をモデルとして電気的指標と微生物代謝物量の関係についても検討し、電気的にそれが推定できる傾向が確認された。よって、本研究の結果、電気的手法を用いた加工青果物の力学特性・ジューシネス・腐敗などの変化を評価できる可能性があることが示された。今後の予定としては、より広範囲の加工貯蔵・品目・品種・品質に対する電気的評価の有効性の確認を行っていき、学術的知見を得るとともに実用性向上に努める。
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