本研究では、温度環境が異なる場合の葉の水ストレス状態を広帯域スペクトルで評価する手法の検討を実施してきた。最終年度では、特に低温条件にさらされた個葉の可視から近赤外領域にわたるスペクトルを取得することで、水分状態に対応したスペクトル応答が変化するのかについての解析を行った。スペクトルは、乾燥過程において連続測定した。また重量と水分活性を乾燥条件下において常時モニタリングした。含水率と水分活性の脱着等温線は、GAB式でフィットできる可能性を示唆した。また、GABパラメータKは、0.97程度であることが確かめられた。可視域(400-700nm)までのスペクトルではクロロフィルに由来するバンドの乾燥過程における増加確認した。さらにクロロフィル吸収帯の波長シフトは小さかった。水ストレス評価のため、この領域を利用した主成分分析を実施した。含水率が高い場合は、どちらの主成分とも正の値となり、低温にさらした場合、むしろややストレスは小さくなる傾向にあった。近赤外域のスペクトルでは、1450と1920nm付近に着目し、その強度比について調査したその結果、当初ほぼ1対1で変化しその後1450nmの強度がかなり小さくなることから、1920nmの比率が高くなる結果となった。一方低温にさらされたサンプルでは、1920nmの比率と高い結果であった。このことから低温状態にさらされたサンプルでは、束縛された水の比率が高い可能性を示唆した。今後本研究を拡張し、温度のみでなく、塩ストレス条件と併発する場合の水ストレス評価が分光分析を利用して可能かについて検討していく予定である。
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