研究課題/領域番号 |
17K15360
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
牧野 良輔 愛媛大学, 農学研究科, 助教 (80772821)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アミノ酸 / 糖化反応 / トリプトファン / ニワトリ / 非酵素的化学反応 / メトホルミン / メチルグリオキサール / リサイクル分取 |
研究実績の概要 |
生体内において必須アミノ酸であるトリプトファンは酵素によって代謝されると一般的に考えられているが、ニワトリの血漿中には非酵素的化学反応によってグルコースと結合した(糖化)トリプトファン、すなわち非酵素的トリプトファン代謝産物が存在する。この事実は、トリプトファンを含むアミノ酸代謝には従来の酵素代謝経路とは異なる代謝経路が存在することを示す。糖化アミノ酸はタンパク質合成に用いられないため、アミノ酸の糖化はアミノ酸の栄養価値を損なうと考えられる。新規アミノ酸代謝経路を明らかにすることに加え、アミノ酸の非酵素的化学反応を抑制することでニワトリの生産性向上を試みた。まず、非酵素的化学反応によるアミノ酸代謝の前駆体であるメチルグリオキサール(MG)の血漿および組織中濃度を測定した。ニワトリの週齢に関わらず血漿中MG濃度は一定であった。浅胸筋、肝臓および心臓のMG濃度は、心臓が浅胸筋および肝臓よりもタンパク質当たりのMG量が多いことが明らかとなった。続けて、MGとトリプトファンの非酵素的化学反応によって生体内で産生する代謝産物の化学合成にとりかかった。現在、複数の候補物質を合成しており、ニワトリ生体内における各物質の存在量を次年度に分析する予定である。また、アミノ酸の非酵素的化学反応を抑制するため、抗糖化化合物として知られるメトホルミンをニワトリに経口摂取させたところ、低タンパク質飼料を給与した際に酸性アミノ酸が増加することが示されており、非酵素的化学反応の阻害によってアミノ酸利用効率を高める可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請課題のうち本年度は、1)新規トリプトファン代謝物の合成および分析、2)非酵素的アミノ酸代謝の抑制による飼料効率の改善の2点について研究を実施した。 1)については、ニワトリ血漿および組織中における新規トリプトファン代謝物の前駆体であるメチルグリオキサールを定量することに成功した。また、新規トリプトファン代謝物の候補物質を複数合成した。今後、これらの物質がニワトリ生体内にどれくらい存在するのかを調べる。2)については、低タンパク質飼料を摂取したニワトリに抗糖化化合物として知られるメトホルミンを経口投与で与えたところ、特に低タンパク質飼料を摂取したニワトリにおいて血漿中酸性アミノ酸量が増加することが明らかとなった。今後、飼料中へのメトホルミン添加による継続的な非酵素的化学反応抑制が、ニワトリの成長に与える影響を調べる。 以上の結果は日本家禽学会秋季大会および春季大会において報告しており、研究内容の一部は現在論文を投稿中である。これらの成果をもとに、当初の目的を達成すべく実験は順調に遂行されており、期待通りの研究の進展があったと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた結果から、新規トリプトファン代謝産物の前駆体であるメチルグリオキサール(MG)が心臓に多く存在することが示された。さらに、新規トリプトファン代謝産物候補に複数の物質が挙げられた。これらの結果から、新規トリプトファン代謝産物のうち、どの候補物質が、ニワトリのどの組織に多く存在するのかを明らかにしていく。また、抗糖化物質によりニワトリ血漿中のアミノ酸濃度に変化があることが認められたことから、抗糖化物質添加飼料をニワトリに与え、継続的な摂取による成長成績および生体内アミノ酸量への影響を調べる。さらに、複数の組織におけるアミノ酸量およびアミノ酸代謝物量を測定し、非酵素的化学反応の阻害によるニワトリ生産性向上の可能性について検討する。
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