研究課題
マウスにおける先行研究によって発生能との関係が示されているオートファジーについて、それらを時期特異的に阻害または誘導することで発生能にどのような影響があるのかについて明らかにするとともに、最終的には発生能を向上させるための処理条件を決定することを目的とした。Rapamycin添加によりオートファジーを誘導した場合、胚盤胞期までの発生率が上昇した。一方で、Wortmannin添加によりオートファジー阻害を行った場合、濃度依存的に分割率および胚盤胞期までの発生率が低下した。次に、オートファジー阻害処理の時期および期間が胚発生能に及ぼす影響について検討を行った結果、発生培養開始から72時間までのオートファジー阻害が発生能を低下させることが明らかとなった。前年度に得られた結果では、この時期の発生ステージにあるウシ胚で、オートファジーの活性が高くなることが明らかとなっており、この時期のオートファジーの胚発生における重要性が示唆された。さらに、この時期のウシ胚は胚ゲノムの活性化が起こる時期ということが知られており、それに新規のタンパク質合成の材料の供給等でオートファジーが何らかの役割を担っているのかもしれない。以上の結果から、マウス同様、ウシ胚においてもオートファジーと発生能との関係が示された。また、特に受精後からごく初期の期間でのオートファジーがその後の発生能に大きく関与することが示唆された。今後は、オートファジー制御方法や検出方法についても更なる改良を加えつつ、これらの知見を利用したウシ体外生産胚の品質向上について検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
計画通り研究を推進できたとともに、計画では次年度開始を予定していた実験にもすでに着手することができている。
今後はこれまでに得られた知見をもとに、体外生産胚の品質向上を検討する。特に、ガラス化保存後の生存性や移植後の受胎率を中心にオートファジー制御による移植用体外生産胚の品質向上の可能性について検討する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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