2017年に実施した、ブタへのアルギニン不足および増給飼料給与の実験では、胸最長筋のCat-2Aおよび2BのmRNA発現量は飼料中のアルギニン濃度による有意な差はなかったが、 Myh7 mRNA発現量はアルギニン不足飼料区に対してアルギニン増給区で高かった。昨年度まで分化誘導3日後のC2C12細胞を用いて実験を実施したが、本年度は分化中のC2C12細胞への培地中アルギニン濃度の影響、NOSインヒビター(L-NAME)の影響、およびクレンブテロールの影響を明らかにするために、分化誘導1日後に各処理を行った。培地中のアルギニン濃度が低い(DMEM培地の1/100)または欠乏するとはCat-2AおよびCat-2BのmRNA発現量が低くなり、培地中のアルギニン濃度がCat-2AおよびCat-2BのmRNA発現量に影響を及ぼすことが明らかになった。このとき、NOS1は発現量が低く、ミオシン重鎖アイソフォーム(Myh)2およびMyh7のmRNA発現量が高く、Myh4の発現量は低く、またPGC-1αのmRNA発現量は低かった。培養細胞とブタの実験では、変化した筋線維タイプが異なることから、直接的な影響と、給餌による影響は内分泌などが介した結果であると考えられた。L-NAMEの添加実験では、L-NAME の添加によりCat-2AおよびCat-2BのmRNA発現量は高くなったが、このときPGC-1αのmRNA発現量は変わらなかった。一方、クレンブテロールを培地に添加しPGC-1α発現を促進すると、NOS1およびCat-2Aは発現量が上がるが、Cat-2Bの発現量は変わらなかった。これらのことから、NO はCat-2の発現量に影響するが、PGC-1αは介さず、また、PGC-1αの発現促進はCat-2のアイソフォームにより影響が異なることが明らかになった。
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