研究課題/領域番号 |
17K15368
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
村越 ふみ 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20759906)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クリプトスポリジウム / ロタウイルス / 共感染 |
研究実績の概要 |
畜産環境における仔牛の下痢症は、人獣共通寄生原虫であるクリプトスポリジウム (Cryptosporidium parvum)およびウシロタウイルス (BRV)の腸管感染が主な原因とされ、両病原体の混合感染は頻繁に報告される。 研究代表者の研究グループは、農場での長期的な疫学解析から、ロタウイルスの顕性/不顕性感染は、その後に感染するクリプトスポリジウムによる水様性下痢の日数を有意に減少させることを示した。このことは、ロタウイルスへの感染がクリプトスポリジウムの動態に影響を与えていることを示唆している。そこで、本研究では、2種の病原体の共感染時の分子機構の解明を目的とする。平成29年度においては細胞株におけるC. parvumとBRVの共感染系を確立した。平成30年度において、共感染を正確・効率的に解析する系の確立を試みた。クリプトスポリジウムとロタウイルスを細胞株において共感染させる本試験において、C. parvum感染細胞、BRV感染細胞それぞれの割合を解析することが必要である。そこで、蛍光抗体を用いてそれぞれの細胞を染め分け、イメージングサイトメーターを用いて効率的に分析を行うことを可能にした。 さらに、農場でのロタウイルスとクリプトスポリジウム感染の追加調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
クリプトスポリジウムとロタウイルスの共感染解析系の確立:クリプトスポリジウムとロタウイルスを細胞株において共感染させる本試験において、C. parvum感染細胞、BRV感染細胞それぞれの割合を解析することが必要である。その手段として、蛍光抗体を用いた顕微鏡でのカウントが考えられるが、多検体を解析することが困難であった。そこで、蛍光抗体を用いてロタウイルス、クリプトスポリジウム感染細胞をそれぞれ染め分け、イメージングサイトメーターを用いた効率的な分析系の確立を行うこととした。イメージングサイトメーターを用いて蛍光のシグナルとその大きさ機械的に判別し、定量解析を行うことで、BRV感染や、BRV由来タンパク質を細胞に接種・発現・添加した際、C. parvumの寄生率がどのように変化するかを明らかにできるようになった。 しかし、BRV由来タンパク質を細胞に発現させることが遅れてしまったことや、共感染測定系の作成に時間がかかってしまったことにより、実験計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の方針で研究を進める。 平成29年度において、BRVを馴化させることによって、ウシ腸管上皮細胞を用いた両病原体の共感染系を確立した。また、BRV感染時にC. parvumの寄生数が有意に減少することを示した。平成30年度は、2種の病原体の効率的な共感染解析系の確立を行った。そこで、本年度は、なぜBRV感染時にC. parvumの寄生数が有意に減少するのかを、確立した共感染解析系を用いて調べる。 ・ウイルス由来タンパク質が引き起こす原虫の侵入阻害:ロタウイルス由来タンパク質によってクリプトスポリジウムの侵入数減少が引き起こされるかを、様々なロタウイルス由来タンパク質のペプチドを処理した細胞株にクリプトスポリジウムを感染させることで検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成30年度は細胞株を用いて、2種の病原体における共感染メカニズムの解明を行う予定であったが、解析系の作成や農場のウシの調査を行ったため、計画に遅れたが生じた。そのため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)物品費として、細胞株を用いた共感染実験に用いる蛍光抗体試薬、細胞培養試薬・器具類を購入予定である。また、原虫の培養に必要な実験動物の購入及び飼育用経費にも使用する。旅費として、日本ウイルス学会、日本寄生虫学会での成果発表を予定している。
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