研究課題
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)はイエネコおよびネコ科動物の致死性ウイルス感染症である。FIPの原因ウイルスであるFIPウイルス(FIPV)にはI型とII型の2つの血清型が存在し、野外においてはI型FIPVが優勢である。しかし、I型FIPVの吸着時に利用するウイルス受容体はII型FIPVとは異なることが証明されているが、その分子は未だ同定されていない。そこで申請者はプルダウン法を用いてI型FIPVの受容体を同定することとした。平成30年度は精製したタグ付I型FIPV Sタンパク質をベイトとしてプルダウン法を実施し、相互作用するタンパク質の同定を試みた。しかしながら、プルダウン法では相互作用するタンパク質を同定することが出来なかった。そこで、ベイトであるタグ付I型FIPV Sタンパク質がI型FIPV感受性細胞であるfcwf-4細胞に結合するか否かを確認したところ、I型FIPV Sタンパク質がfcwf-4細胞に結合している事実は確認できなかった。付加したタグがFIPV Sタンパク質とウイルス受容体の相互作用を阻害する可能性を踏まえ、対照として作製したタグ付II型FIPV Sタンパク質のfcwf-4細胞に対する結合性を確認したところ、II型FIPV Sタンパク質はfcwf-4細胞に結合した。さらにこの結合は、II型FIPV のウイルス受容体であるアミノペプチダーゼNに対するモノクローナル抗体により阻害されることを確認した。これらを踏まえると、I型FIPV Sタンパク質のfcwf-4細胞に対する結合性の欠如は、タグによる立体障害というよりもI型FIPV Sタンパク質とそのウイルス受容体に特有の問題である可能性が示唆された。
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Research in Veterinary Science
巻: 120 ページ: 57~62
10.1016/j.rvsc.2018.09.002