研究者所属機関で消耗性症候群(Wasting marmoset syndrome)と診断したマーモセットに対し消化酵素剤の試験的治療を実施したところ、一部個体で著しい臨床徴候の改善が認められた。このことは研究者の仮説通り、消耗性症候群の病態に消化吸収が深く関与していることを示唆している。また消耗性症候群の血中バイオマーカーとして、ある物質が非常に有用であることを明らかにした。 消耗性症候群の病理学的な解析として、病理組織学的な解析を実施している。その結果として、多くの罹患個体の空腸に特異的な病理組織学的な異常が確認された(現在投稿準備中のため詳細は述べない) 国内外の他のマーモセット飼育施設の視察は順次実施しており、これまでに国外3施設、国内3施設の視察を実施してきた。その結果として、消耗性症候群の罹患率は各施設によってさまざまであり、海外施設において明らかに低かった。また血縁関係を研究者所属施設と同じくする国内施設においてもかなりの差があることが明らかになった。このことは消耗性症候群の病因に外因(食餌やその他飼育環境)などが関与していることを示唆するが、これは今後も確認していく必要がある。現在は、これらのデータを学術雑誌に投稿準備中である。 また、消耗性症候群の関連疾患として国内マーモセット飼育施設で原因不明に多発する“マーモセットの十二指腸拡張症”を臨床的および病理学的に解析し、新規消化器疾患として提唱した。検索の結果、本疾患は実中研コロニーの死因の約21%を占め、その主徴候は嘔吐や食欲不振であった。またその病態機序として、十二指腸と結腸の癒着、腹膜炎や胆管炎の関与が考慮された。本疾患の簡易スクリーニング検査法として、エコー検査と単純レントゲン検査を確立した。これらの研究成果は国際雑誌であるscientific reportsに報告した。
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