研究実績の概要 |
イヌの組織球肉腫症候群はさらに樹状細胞由来のものを組織球肉腫(孤立性もしくは播種性)、マクロファージ由来のものを血球貪食性組織球肉腫(HHS)と細分類されている。血球貪食性組織球肉腫に関しては有効な治療に関する報告は存在せず、血球貪食性組織球肉腫に対する治療法の確立は小動物臨床の分野において早急に行って行かなければならない事項である。 犬の血球貪食性組織球肉腫はマクロファージによる顕著な血球貪食像を特徴とした増殖性悪性腫瘍とされているが、本研究は腫瘍性疾患ではなくマクロファージの貪食能の異常による反応性の疾患であると仮説した研究である。血球貪食症候群と類似した疾患の特徴を有するヒトの血球貪食症候群では、CD47-SIRPαシグナルによる貪食抑制シグナルを破綻させることが発症と関与していることが報告されており、犬においてこのCD47-SIRPαシグナルに関する基礎的検討を計画した。CD47-SIRPαシグナルが関与していることがあきらかとなれば病態の把握だけでなく、新規治療の標的となるため非常に重要である。 本年度は、免疫組織化学によるCD47,SIRPαの評価を実施するための条件検討を実施し、犬の脾臓組織におけるマクロファージ上のSIRPαを検出するために適した抗体の濃度および抗原賦活化の条件を決定した。実際の血球貪食性組織球肉腫における発現の変化を評価するまでには至らなかったが、今後はこれらの情報をもとにCD47-SIRPαの関与に関して明らかにしていく予定である。
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