研究課題
牛白血病ウイルス(BLV)は国内だけでなく、多くの国や地域でBLVが蔓延している。さらに、BLV感染は致死的な疾病である地方病性牛白血病(EBL)の発症や生涯乳生産量および繁殖成績の低下を引き起こすため、畜産業に経済的損失をもたらしている。本研究では、BLVの病原性を基盤とした新たなBLV感染制御対策確立に向け、BLVの病原性解析を行った。若齢EBL発症牛9頭を含む50頭のBLV感染牛の血液または腫瘍塊からBLVゲノム全長の決定およびクローニングを行い、感染性分子クローンを作出した。それらクローンのウイルス産生量および形質転換能力を評価した結果、ウイルス産生量および形質転換能が異なることが明らかとなった。次に、系統樹解析を基にして各株を3群に分けて比較したところ、一つの群はウイルス産生量が有意に高いこと、それらの株に感染していた牛の血中プロウイルスコピー数が高値を示すことが明らかとなった。また、腫瘍原性を評価するため3次元培養による形質転換能を解析した結果、形質転換を誘導する株としない株に分けられ、EBL発症牛から分離した株は未発症牛から分離した株よりも有意に形質転換を誘導することが明らかとなった。さらに、近年問題となっている若齢のEBL発症牛で高率(88.9%)に形質転換能を有する株が分離された。一方で、ウイルス産生量と形質転換能の相関性は認められず、BLVの病原性とウイルス産生量を制御するゲノム領域は異なることが推測された。次に各株の変異を解析した結果、特定の領域の変異は認められず、ゲノム全体に変異が認められた。以上の結果から、変異の少ないBLVにおいても、株によって病原性が異なること、ウイルス産生能力と形質転換能は相関していないことが明らかとなったが、これら野外株間の病原性の差異を更に解析することにより、病原性や伝播リスクを事前に予測する感染制御対策に応用可能であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた、病態の異なる牛からのBLV感染性分子クローンの作出、ウイルス産生量および形質転換能の評価は完了している。
病原性への関与が推測される変異または領域は特定できなかったため、平成30年度は各領域を組換えたキメラウイルスを作出し、病原性に関与する変異を明らかとする。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
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