研究課題
昨年度、ウイルス産生能力と病原性(形質転換誘導能力)が相関していないことから、BLVは伝播性と病原性が独立していることが示唆された。この伝播性と病原性を決定するゲノム領域を調べるため、本年度はLTR、gag-pro-pol、env、pX領域を組換えたキメラウイルスの作製および野生株のさらなるクローニングを行った。ウイルス産生量が異なる感染性分子クローンを上記領域で組換えたキメラウイルスを用いた解析から、伝播性に関与することが考えられるウイルス産生量はLTR領域の変異により支配されていることが明らかとなった。一方で、形質転換誘導能力を示す株と示さない株のLTR領域を組換えても、病原性は変化せず、ウイルスゲノム後半の組換えにより病原性が変化することが明らかとなった。さらに、野生株の中からウイルスゲノムの前半領域のgag-pro-pol領域を欠損した株で高い病原性を示す株を見出した。これらの結果はウイルス伝播にはLTR領域の変異が、病原性にはpX領域の変異が関与していることを示しており、昨年度に示唆された伝播性と病原性はBLVにおいて相関していないことを示唆する結果が得られた。これらの結果は、BLVには強毒株でありながら伝播性が低いものや、その逆の株が存在することを示唆するものである。これらの結果から、BLVは高伝播性強毒株、低伝播性強毒株、高伝播性弱毒株、低伝播性弱毒株の4つのグループに分類することが可能であり、強毒株を優先的に淘汰することにより、直近の経済的損失軽減を行い、次に、高伝播性株を淘汰することにより農場での感染率の上昇低減に役立てられることが考えられた。従って、本研究によりBLV感染牛の淘汰順位を明確にすることが可能となり、新たな感染制御対策の基礎的知見になると考えられた。
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