研究課題/領域番号 |
17K15395
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
布目 三夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 研究員 (40609715)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 家禽 / ミトコンドリアゲノム / 進化 / 育種 / Oxford Nanopore MinION |
研究実績の概要 |
これまでの研究によって家禽ウズラのミトコンドリア・D-loop領域のDNA配列における分子系統樹が、大きく二つのグループに分かれたことをうけ、2018年度は次世代シーケンサーMinIONを用いて家禽ウズラの全ミトコンドリアゲノム配列の解読と分子系統学的解析を行った。MinIONは、2日間で約7Gbのデータが得られる、手のひらサイズの次世代ロングリードシーケンサーである。取得データ量がリアルタイムで確認可能なため、データ量が十分と予想される任意のタイミングでシーケンシングを停止でき、サンプルの入れ替えが行えるため、無駄を省けることも利点である。 まず、ウズラミトコンドリアゲノムをPCR増幅するため、全長の約1.6 kbのミトコンドリアゲノムをそれぞれの両端が重なり合う7 kb程度の領域に三分割し、ロングPCRによるミトコンドリアゲノムの増幅・生成を行った。NEB社のライブラリ調整試薬を用いてアダプターおよび検体ごとに異なるバーコード配列(12種類)をライゲーションし、12検体のマルチプレックスシーケンシングを行った。開始から約14時間で4Gbのデータがえられたことを確認し、シーケンシングを停止させた。1検体当たり、2万~4万個のリードが得られ、そのうち8,000以上ものリードが、リファレンスに用いたニホンウズラミトコンドリアゲノム配列(アクセション番号:AP003195)に90%以上の相同性を持ってマッピングされた。マッピングされたリードのうち9割は、7 kbp以上のロングリードであった。 得られたミトコンドリアゲノム配列を用いた分子系統樹は大きく二つのグループに分かれ、D-loop配列の系統樹と同じ樹形を構築した。このことから、家禽ウズラのミトコンドリアゲノムには大きく二つのグループが存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定ではMiseqによるミトコンドリアゲノムのシーケンシングを予定していたが、名古屋大学の共通実験施設が保有するMiseqが近年では稼働していないことと、独自にMiseqを行う場合、ライブラリ調整の費用が高額になるため、代わりのシーケンシング手法を探していた。Oxford NanoporeのMinIONの国内での取り扱いがちょうど2018年度から始まったため、実際に必要となるコストと使用方法の確認に時間を費やした。MinIONを用いたシーケンシングは申請者の実験室で手軽に実施可能なため、業者委託するよりも短時間でデータが取得でき、後れを取り戻せると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアゲノムの解析は、プライマーとDNAポリメラーゼの種類の選定と、24個のバーコード配列によるマルチプレックス、および十分量のデータが得られるシーケンシング時間の目安がついたため、より低コスト・短時間での解析が行えると予想している。ウズラ12集団各10個体について、ミトコンドリアゲノムの解読と分子系統学的解析を行う。 また、ゲノムワイドなSNPデータの取得には、近年トヨタ自動車株式会社によって開発されたGRAS-Di法を用いる予定である。まず12集団から各1検体ずつ、12検体をGRAS-Diの予備解析に用いて、得られるSNP数とゲノム上の分布について確認する。十分量のSNPが得られることを確認したのちに、96検体の解析を委託する。得られたSNPデータをもとに集団遺伝学的解析を行い、家禽ウズラの育種の歴史の検証と、戦前および戦後のウズラの遺伝学的差異について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
Oxford NanoporeのMinIONの導入が遅れたため、ライブラリ調整試薬を予定数購入していないことと、当初Miseqでの解析を想定していたがMinIONでの解析費用がそれよりも低額で行えるため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、GRAS-Diおよび全ゲノムリシーケンスにおいて、より多検体を解析することに使用する。
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