研究課題/領域番号 |
17K15399
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森山 実 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30727251)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 昆虫 / 共生細菌 / 体色 / カロテノイド |
研究実績の概要 |
動物の体色は生物の適応度に密接に関わる重要な形質であり、高度に洗練されたしくみを介して形成されている。植食性の昆虫類では葉組織に紛れ込む緑色の隠蔽型の体色をもつものが多い。一般に、昆虫の緑体色は黄色のカロテノイド色素と青色のビリン結合タンパク質の組み合わせで形成されるが、カロテノイドの乏しい植物の汁液を利用するカメムシ類昆虫ではどのように緑色の体色を形成しているのか不明であった。そこで、本研究では共生微生物による色素供給の可能性を疑い、チャバネアオカメムシとその腸内共生細菌を用いて、この仮説の検証に取り組んだ。共生細菌を実験的に除去したチャバネアオカメムシは緑体色を形成せず、ビリン結合タンパク質およびカロテノイド色素の双方が宿主カメムシの体内から検出されなくなった。そこでまず、ペプチドマッピングを用いてビリン結合タンパク質遺伝子を同定し、それが必須アミノ酸の一種である芳香族アミノ酸を豊富に含むことを明らかにした。さらに、器官培養系を用いて共生細菌が宿主昆虫にビリン結合タンパク質の原料となる芳香族アミノ酸を供給していることを証明した。一方、黄色のカロテノイド色素に関しては、ゲノム解析により共生細菌がカロテノイド合成能をもつことや、HPLC-MSを用いた解析からゼアキサンチンを主成分としたカロテノイド類を合成することを明らかにした。さらに、共生細菌のカロテノイド合成能を遺伝学的に操作し、生成されるカロテノイド組成を変化させると、それに対応する形で宿主カメムシの表皮中のカロテノイド組成も変化することを実証し、宿主昆虫が共生細菌の合成するカロテノイド色素を自身の体色として利用していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
共生細菌が青色色素の原料となる芳香族アミノ酸を宿主昆虫に供給するだけでなく、昆虫が自身で合成することのできない黄色のカロテノイド色素そのものを宿主昆虫に供給していることを証明するなど、昆虫の体色形成における共生微生物の役割について包括的に理解することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さまざまな緑色カメムシ類において共生微生物による色素供給がどれほど普遍的に存在するかを明らかにすることで、昆虫類における体色多様化の進化経路を明らかにする。また、成果の論文化にも注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部、実験に必要な物品や薬品が年度内に納品できなかったため、購入を見送り次年度に繰り越した。早期に消耗品費として使用予定である。
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