研究実績の概要 |
サンゴ礁は世界的に衰退の一途を辿っている。近年, 人畜の糞便に含まれる細菌や土壌真菌と同一種とみなされる微生物がサンゴの病原菌であることが示され, 陸域を起源とする微生物群のサンゴへの悪影響が懸念されるようになった。一方で, サンゴ礁に実際に流入する陸域起源微生物群のサンゴへの感染は検証されていない。陸域からサンゴ礁への微生物群の流入実態と, それら微生物群のサンゴへの影響を評価することは, サンゴ礁環境の理解と適切な管理に不可欠である。そこで, 本研究は, 1) どのような微生物群が実際に陸域からサンゴ礁に流入しているのか, 2) それらが当該海域のサンゴに感染し定着するか, 3) サンゴの病変の発生または進展を引き起こすか, の3点の検証を目的とする。 本研究の申請時点では、調査地域とした沖縄県本部町沿岸海域の2定点を海域のサンプリング定点とする予定であったが、平成29年度に当該地域において実施したフィールド調査から、本研究の目的達成には、より多定点での試料採取が望ましいとの結論に至り、海域定点として新たに5か所選定し、計7か所とした。陸域定点としては、河川定点3か所、下水処理場1か所をサンプリング定点として選定した。次に、これら定点から、それぞれ2回ずつ試料採取を行った。採取した各試料は同一法によるDNA抽出に供し, 環境試料中の全DNAである「メタゲノムDNA」を得た。これら試料中の微生物叢の網羅的把握を目的として、本メタゲノムDNAを鋳型に用いて16S rDNA部分配列をPCR増幅し、一部の試料をMiSeqシーケンサーによる大量塩基配列解析に供した。現在、詳細を解析中である。
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