サンゴは世界的に衰退の一途を辿っている。近年、人畜の糞便に含まれる細菌や土壌真菌と同一種とみなされる微生物がサンゴの病原菌であることが示され、陸域を起源とする微生物群がサンゴへの悪影響を及ぼしている可能性が浮上してきた。一方で、サンゴ礁に実際に流入する陸域起源微生物群のサンゴへの感染性および病原性は検証されていない。サンゴに病原性を示す分類群のサンゴ礁域における分布については、サンゴの病変部からの検出例を除いては未知の状態である。そこで、本研究では、サンゴ礁域およびサンゴ礁に接続する陸海域の微生物叢の解析を通じて、陸域由来微生物群のサンゴ礁域への流入とその影響を、特にサンゴへの影響に着目して検証することを目的としている。本年度は、前年度に引き続き、調査地域とした沖縄県本部町沿岸域と、当該海域に流入する河川の微生物試料を採取した。これら試料からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子配列をPCR増幅し、増幅産物をMiSeqシーケンサーによる次世代シーケンシング解析に供した。以上のように微生物叢解析を実施するとともに、微生物群の分離・培養を試みた。その結果、サンゴへの病原性が既往研究で報告されている菌種とその拮抗菌を一部の同一試料から検出するなど興味深い知見を得た。また、土壌がサンゴ礁に流出することがあり得るサンゴ礁にごく隣接した陸域の土壌から、サンゴに悪影響を及ぼすことが懸念される合成有機化合物の分解微生物を検出し分離・同定した。
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