研究課題/領域番号 |
17K15404
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新保 奈穂美 筑波大学, 生命環境系, 助教 (40778354)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドイツ / 造園学 / 林学 / 文献調査 / 歴史的研究 |
研究実績の概要 |
平成29年度は申請以前にドイツにおいて入手済みの資料(ハインリッヒ・マイル氏のスケッチ,実験林の樹種リスト,親族による人物伝等)の分析を進めるとともに,補助事業期間開始後に新たに補完的な文献資料をドイツ(ヴュルツブルク,ミュンヘン,ベルリン)において収集した.また,シーボルト博物館にて当時の日独関係の背景の把握も行った.その結果,調査対象であるハインリッヒ・マイル氏は複数回来日しており,その時の記録がドイツ側の入手済みの資料および新たに取得されている資料にも残されていることが判明した.具体的には,日本を縦断してスケッチした際の行き先,スケッチに描かれた植物種,ハインリッヒ・マイル氏の思惑,東京帝国大学で教鞭をとった際の日本人学生一覧,他に来日していたドイツ人研究者,ドイツ側の歴史的背景等が読み取れた.また,得られた成果について,ドイツに精通している研究者との議論を随時行い,なぜ日本はドイツから緑地計画や都市計画等について知識を吸収したのか,その文化の親和性や歴史について考察を深めた.これらの過程を通じて,日本側でハインリッヒ・マイル氏と関わった地域および人物も整理されたことから,平成30年度の日本側でどこを調査し,どのような資料を収集すべきか候補を挙げることができ,次の調査・分析のための下準備もおおむね整った. 本年度の成果は予定していた国際会議では受理されず発表できなかったが,次年度に発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に入手していた資料や平成29年度にドイツ(ヴュルツブルクのシーボルト博物館など)において新たに収集した資料の分析は当初計画していたペースで進んでおり,進捗はおおむね順調である.また,ドイツ各都市の図書館データベースを参照した結果,ドイツ側で収集すべき必要な資料はおおむね入手完了したと考えられる.予定していた国際会議にて成果を発表はできなかったが,平成30年度に別の国際会議または国内学会で発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は日本側学識者の立場から見たドイツとの学術交流の解明に取り組む予定である.ドイツや日本に残された,日本人の著作物(当時の学生の博士論文,授業教材等)を収集し,学術交流の内容,すなわち人間関係や起きた出来事を明らかにする.ドイツや日本に残された,日本人の著作物(当時の学生の博士論文,授業教材等)を収集し,学術交流の内容,すなわち人間関係や起きた出来事を明らかにする. 日本人の著作物:日本人の著作物については,1890年代にミュンヘン大学に留学した本多静六と,1900年代に同大学に留学した本郷高徳の博士論文はPDFデータとして入手済である.これらの内容から,当時の日本人がドイツで何を学んだかを明らかにするとともに,中村弥六など他の留学生の著作物が存在するか,調査を行う.また,平成29年度の成果より,誰がハインリッヒ・マイルの授業を帝国大学で履修したかは明らかになっているため,それら学生の生涯や業績についても,調査を行う. 授業教材:日本で林学や造園学の講座が開始した際の授業教材については, 1890年代に日本初の大学演習林として設置された千葉演習林に残存している可能性があるため,調査を行う(国内旅費を使用).千葉演習林の調査にあたっては,千葉演習林長を以前務めていた山本博一教授(東京大学新領域創成科学研究科自然環境学専攻)に協力いただく.また,木曾山林資料館に明治期から現在までの林学に関する教科書が,東京大学図書館にもハインリッヒ・マイルが残したと思われる著書が所蔵されているため,それらも参照する. 以上の資料を解読・解釈し,日本側から見た日独学術交流の内容を整理する.平成29年度の成果とも併せ,平成30年度の研究成果を論文としてまとめ,緑地計画分野を代表する査読付き国内誌(ランドスケープ研究)に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に研究成果発表を予定していた国際会議への参加が叶わなかったため,その旅費が残った.来年度の調査や学会発表費用に使用する予定である.
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