研究課題/領域番号 |
17K15406
|
研究機関 | 鹿島建設株式会社(技術研究所) |
研究代表者 |
板川 暢 鹿島建設株式会社(技術研究所), 地球環境・バイオグループ, 研究員 (00773566)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ハビタット / 生物多様性 / 時間変化 / グリーンインフラストラクチャー / Eco-DRR / トウホクサンショウウオ / トンボ / ドローン |
研究実績の概要 |
震災1年後の2012年以降継続している気仙沼市舞根地区の津波跡地の湿地環境でのトウホクサンショウウオの卵のう分布およびトンボ相の種組成・分布の経年変化のモニタリングを実施した。トウホクサンショウウオの卵のうは全域で280対が確認され,前年度に比べて減少した。2012年度以降の変動については,汽水化による産卵環境の縮小により2013年には産卵数が大きく減少したが,2014年から2016年までは産卵数は徐々に増加し,2017年以降は再び減少している。これらの原因は植生遷移や湿地の乾燥化,埋立てといったハビタットの消失・縮小が要因である。卵のう確認数は前年度(1年前)および4年前の卵のう数と有意な正の相関,2年前の確認数と有意な負の相関が見られた。トンボ類の種数は37種であった。α多様性は徐々に2015年までは増加傾向にあったが、近年の調査では攪乱依存種が減少傾向にある。特に初期はβ多様性が高かったが,現在は環境の均一化に伴って減少していることが明らかになった。 UAVによる空撮で取得したRGB画像及び近赤外域を含むマルチスペクトル画像から,ハビタットのアーカイブ化として,SfMによりオルソ画像合成とNDVI分布図を作成し,ハビタットの変化状況を把握した。高茎草本の被覆が拡大により湿地内の植生は均一化しつつあること,ヨシが集中する箇所の縁辺部では活性度が高い一方,中心部では活性が低いことが明らかになった。また,3Dスキャナを用いた樹林内の湿地の点群を取得し,樹林構造と詳細地形を把握した。 旧版地形図と植生図,人口予測データを用いて,過去100年間のハビタットの変化と将来起こり得る災害被害を推定し,シナリオ分析から被害軽減のための移転,グリーンインフラとしての遊水地整備による費用対効果を算出した。洪水被害では空き家を利用した移転策で被害をゼロにすることができることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
好適な対象地を対象に研究を進められており、期待している結果が得られている。国際学会(ICLEE)での研究発表を1報行ったほか, 関係論文5編の投稿準備を進めている。 グリーンインフラストラクチャーとしての土地利用再編による,Eco-DRR効果を推定する手法を提示した。本件について国際誌への投稿準備を進めている。 ハビタットのアーカイブ化に関連して、ドローンを用いた空撮,及びマルチスペクトルセンサーを用いた植生解析の基盤データが完成し,GISを用いたハビタットマップの作成を進めている。 3Dスキャナを用いたハビタットアーカイブを試験的に実施し,課題と可能性を整理できた。生物多様性との関係性を明らかにするためのアーカイブ化とデータ取得手法について,新年度中に提示することを目指している。
|
今後の研究の推進方策 |
ハビタットと生物多様性の時間変化に関するデータの蓄積は進んでおり,得られたデータを基に分析を進めるとともに,論文投稿,学会発表を随時行っていく。ハビタットアーカイブ化の手法については課題と可能性が得られたため,追加・新規の調査を実施する予定であるため,早期の研究実施を目指している。グリーンインフラストラクチャーとしての土地利用再編とハビタット組成に関する研究についてはおおよそ期待する結果が出たため,論文投稿,学会発表を随時行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請者の所属変更に伴う研究環境の変更やステークホルダー、調査予定地の状況変化などにより、当初想定していた計画に沿った実施が適わなかった。また、投稿を予定していた論文の準備が遅れている。ハビタットアーカイブに用いる機材購入や作成費が,データ作成や機材リニューアルなどの関係で残っている。前年度の残額分は、準備を進めている論文の投稿、及びハビタットマップ作成費や機材購入費として支出予定である。
|