研究課題/領域番号 |
17K15413
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
城所 聡 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70588368)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 植物 / 低温ストレス / カルシウムシグナル / 転写制御 |
研究実績の概要 |
急速な温度低下による低温ストレス時のDREB1遺伝子の発現誘導を制御する転写因子CAMTA3およびCAMTA5の相互作用因子を前年度に引き続き探索した。GFPと融合したCAMTA3またはCAMTA5を過剰発現する形質転換シロイヌナズナの植物体を用いて共免疫沈降をおこない、質量分析装置によって共精製されたタンパク質を同定した。その結果、前年度と同様にすべてのサンプルて_CAMTA3、CAMTA5、CAMTA6が検出された。また、カルシウム結合タンパク質の1つであるカルモジュリン、カルモジュリン様タンパク質、また特定のタンパク質相互作用においてリンカーとなる14-3-3タンパク質が一種ずつ検出された。 GFPと融合したCAMTA5を、CAMTA5自身のプロモーターによって発現させる組換えDNAを作製し、CAMTA5のT-DNA挿入変異シロイヌナズナに導入した。得られた形質転換植物体に急速な低温ストレスを与えた時のDREB1遺伝子の発現を測定した。CAMTA5のT-DNA挿入変異シロイヌナズナでは、野生型植物体よりもDREB1遺伝子の発現量が低下したのに対して、得られた形質転換植物体ではDREB1遺伝子の発現量が野生型のものと同程度に回復した。そこで、CAMTA転写因子群が共通して持っている機能ドメインを欠損または変異させたCAMTA5をCAMTA5自身のプロモーターによって発現させる組換えDNAをCAMTA5のT-DNA挿入変異シロイヌナズナに導入し、形質転換体を得た。 前年度に引き続き、カルシウムイオンチャネルの阻害剤をスプレーで前処理したシロイヌナズナの野生型植物体に対して急速な低温ストレス処理をおこなった。植物体でのDREB1遺伝子の発現量を測定した結果、阻害剤処理の有無によるDREB1遺伝子の発現量の変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうち、CAMTAの修飾酵素や相互作用因子の同定については、複数の因子が相互作用因子の候補として単離された。また、CAMTAの活性制御部位を解析するための形質転換シロイヌナズナを作出した。以上の研究計画は順調に進展していると考えられる。しかし、CAMTAの活性制御に関わると考えられるカルシウムシグナルの同定については平成29年度と平成30年度とで実験結果が一致しなかった。そのため、実験条件の見直しが必要である。全体としては、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
CAMTA2/3/5と、相互作用因子候補とのシロイヌナズナ植物体内での相互作用を1対1のco-IPやsplit luciferase法によって確認する。特に、急速な温度低下処理によって相互作用強度が変化するかを解析する。また、CAMTAと相互作用因子候補の相互作用領域を酵母two-hybrid法によって同定する。 変異型CAMTA5をcamta5変異体内で発現させた形質転換シロイヌナズナに急速な温度低下の処理をおこないDREB1遺伝子の発現量を測定する。DREB1遺伝子の発現が回復しなかった部位に相互作用する因子に着目して、その遺伝子のT-DNA挿入変異体あるいはゲノム編集変異体を作出し解析する。 シロイヌナズナ植物体にカルシウムイオンチャネル阻害剤存在下で急速な温度低下の処理をおこないDREB1遺伝子の発現量を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
植物体内での相互作用確認のための1対1での共免疫沈降実験を次年度にまわしたため、次年度使用額が生じた。それ以外の研究計画に変更はなく、前年度までの研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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