研究課題
急速な温度低下に応答してDREB1の転写を活性化するCAMTA転写因子の活性制御機構の解明を目指した。DREB1遺伝子の低温誘導性発現と急速な低温ストレスによって起こる細胞質内Ca2+濃度の増加との関係を調べるために、シロイヌナズナの野生型植物体にCa2+チャネル阻害剤存在下で低温処理を行なった。この時のDREB1の発現量を測定したが、対照区と比較して発現量の変化は見られなかった。急速な温度低下による低温ストレス時のDREB1遺伝子の発現誘導を制御する転写因子CAMTA3およびCAMTA5の相互作用因子を探索した。CAMTA5-sGFPを発現する形質転換シロイヌナズナを用いて共免疫沈降をおこない、質量分析装置によって共精製されたタンパク質を同定した。その結果、カルシウムイオン結合タンパク質の1つであるカルモジュリン(CaM)とカルモジュリン様タンパク質の一種(CMLa)、特定のタンパク質相互作用においてリンカーとなる14-3-3タンパク質の1つGRFa、他のCAMTAタンパク質が検出された。同定された相互作用因子候補について、タバコへの一過的発現系を用いたsplit-Luciferase法によってCAMTA5との相互作用を解析した。その結果、CAMTA同士の二量体形成とCAMTA5-CMLa、CAMTA5-GRFaの相互作用が確認された。CMLa、GRFaのT-DNA挿入変異体を単離し、これらの植物体でそれぞれの遺伝子の発現が失われている事を確認した。これらの変異植物体を用いて低温ストレス時のDREB1Bの発現量を解析した結果、急速な温度低下が起こる土植え植物体での処理では野生型植物体と比較して変化は見られなかったが、緩やかな温度低下が起こる寒天培地プレートで生育した植物体を用いた処理では野生型植物体と比較してDREB1Bの発現が増加する傾向が見られた。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 118 ページ: e2021048118
10.1073/pnas.2021048118
Plant, Cell & Environment
巻: - ページ: -
10.1111/pce.14009