シロイヌナズナの低分子RNAであるmicroRNA (miRNA)はDicer-Like1(DCL1)タンパク質が中心的な役割を果たす。DCL1はヘアピン構造をとる一本鎖RNAを切断しmiRNAを生成するが、DCL1と協調的に機能してmiRNA生成に関与する複数のタンパク質が同定されている。その一つであるSERRATE(SE)タンパク質を中心に解析を行った。その結果、SEタンパク質のN末端領域がリン酸化されていることを見出した。このN末端領域を欠失させたSEタンパク質を発現するシロイヌナズナを作出し解析を行った結果、複数のmiRNAの蓄積量が野生型株と比較して減少しており、逆にmiRNA前駆体の蓄積量は増加していた。このことから、N末端領域のリン酸化がSEタンパク質の機能に重要である可能性が考えられた。 また、シロイヌナズナDCL1によるmiRNA前駆体切断機構について研究を行った。miRNA前駆体のモデルとしてpri-miR167aを用い、ステム上に存在する複数のミスマッチをそれぞれ閉じた変異体pri-miR167aを調製しin vitro切断アッセイを行った。シロイヌナズナDCL1は昆虫細胞/バキュロウイルス発現系を用いて調製したものを用いた。その結果、miRNA/miRNA* duplexに隣接するミスマッチを閉じるとDCL1によるmiRNA前駆体の二段階目の切断の効率が低下すること、また、miRNA/miRNA* duplexから離れたミスマッチを閉じるとDCL1によるmiRNA前駆体の切断の正確性が低下することを明らかにした。すなわち、ミスマッチがDCL1によるmiRNA前駆体の切断の効率と正確性にそれぞれ異なる役割を担っていることが明らかになった。
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