研究課題/領域番号 |
17K15417
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉野 達彦 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (50756179)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | C-H活性化 / 不斉触媒 / コバルト / ロジウム / カルボン酸 |
研究実績の概要 |
昨年度までに見出していたビナフチル骨格を有するキラルカルボン酸とコバルト触媒を用いた、チオアミドを配向基とする不斉C(sp3)-Hアミド化反応について、触媒構造と反応条件を精密にチューニングすることにより高いエナンチオ選択性が発現することを見出した。これにより様々な構造を有するアミノカルボニル誘導体の不斉合成法を確立することができた。また類似のキラルカルボン酸誘導体とロジウム触媒を用いることで、より困難かつ合成的価値の高いメチレンC(sp3)-H結合の不斉アミド化反応が可能であることも見出した。さらにこのメチレン識別反応では、反応剤を変更することで不斉炭素-炭素結合形成反応にも成功している。以上の結果から、当初の想定通り、キラルビナフチルモノカルボン酸とロジウムまたはコバルト触媒の組み合わせが、汎用性の高い不斉C-H活性化触媒であることを実証できた。 一方で、カルボン酸をキラルプロトン源とする反応については様々な反応条件や基質、触媒構造を検討したがエナンチオ選択性の向上は困難であった。これについてはキラルCp配位子の導入など、より幅広い触媒の検討が必要であると考えられる。 さらに本年度はフェロセン骨格を有するキラルカルボン酸の設計と合成もおこなった。既存の不斉補助基を用いたジアステレオ選択的リチオ化、ハロゲン化、クロスカップリング反応を経由することで、高い光学純度でキラルフェロセンカルボン酸を得る合成ルートを考案し、種々の誘導体を合成した。これらをスクリーニングすることで、上記のキラルカルボン酸ではエナンチオ選択性の向上が困難であった基質について選択性の改善が可能であった。こちらについでも引き続き検討を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定した通りキラルビナフチルモノカルボン酸の有用性、汎用性を実証することができた。ロジウム触媒を必要とする場合もあるが、おおむね想定通りの結果が得られているほか、新たなキラルカルボン酸についても有望な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
新たなキラルフェロセンカルボン酸を見出したため、これを用いる不斉触媒反応について検討していく。またキラルビナフチルモノカルボン酸を用いたメチレンC(sp3)-H官能基化反応について、基質一般性の検討や新たな反応剤との反応について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画とは異なる有望な触媒系を見出したため研究計画を延長し、次年度も引き続き研究を行う予定である。それにともなう消耗品、共通機器の利用代、およびそれらの研究成果公表のために利用する予定である。
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