研究実績の概要 |
抗菌ペプチドであるグラミシジンAのone-bead-one-compound (OBOC)ライブラリー構築およびスクリーニング法の確立と、抗がん活性ペプチドであるヤクアミドBの固相全合成法の確立を目指した。またイオンチャネル形成巨大ペプチドであるポリセオナミドBについては細胞内挙動および作用解明を目的として研究を展開した。 グラミシジンAについては、バリン、ロイシン、スレオニン、N-メチルアスパラギンをsplit/pool法により第4, 6, 8, 10, 12, 14残基にランダムに導入した4096種類の類縁体群で構成されるOBOCライブラリーを構築した。続いて、リポソームを用いたイオン透過活性試験と、P388マウス白血病細胞を用いた細胞毒性試験の2種のスクリーニングにより、ライブラリーを評価した。その結果、グラミシジンAと同様の高いイオン透過活性と細胞毒性を示す類縁体のほかに、高いイオン透過活性と減弱した細胞毒性を示す類縁体等、グラミシジンAと特性の異なる類縁体を複数得ることに成功した。 ヤクアミドBについては、官能基変換を施したStaudingerライゲーション試薬を利用することで固相全合成法を確立した。本法を応用し、デヒドロアミノ酸部位立体異性体である計8種類の類縁体の固相全合成を達成した。 ポリセオナミドBに関しては、生物活性として強力な細胞毒性とイオンチャネル活性が報告されているが、哺乳動物細胞に対する詳細な作用は未解明であった。そこで、ポリセオナミドBの細胞内挙動を追跡するため、N末端にBODIPYを導入した蛍光標識体を新たに合成した。ポリセオナミドBおよび蛍光標識体を用いた作用解析の結果、ポリセオナミドBは細胞膜電位変化を引き起こすことに加え、エンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれ、リソソーム膜間のpH勾配を解消する複合的な作用を持つことを強く示唆する結果を得た。
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