研究課題/領域番号 |
17K15422
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安田 茂雄 金沢大学, 薬学系, 助教 (40647038)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アレン / C-H活性化 / アルキン / アルケン / ロジウム / 環構築反応 |
研究実績の概要 |
当該年度の初期計画に沿って、アレン-アルキン-アルキン及びアレン-アルケン-アルキンを用いる新規環構築反応の開発を試みた。以下に示すように、計画した反応の開発に加えて、関連領域における新規環構築反応の開発にも成功した。 1)アレン-アルキン-アルキンの環化異性化反応:ロジウム触媒をアレン-アルキン-アルキンと処理することにより、5/5/6員環化合物が一挙に得られることを見出した。さらに、反応機構解明のための検討実験により、当初推定した反応機構が誤りであることを突き止め、新たに正しい反応機構を提唱することもできた。 2)アレン-アルケン-アルキンの分子内環化付加反応:ロジウム触媒をアレン-アルケン-アルキンと処理することにより、分子内[2+2+2]環化付加反応あるいは環化異性化反応が進行することを見出した。本法においては、用いるロジウム触媒及びアレン上の置換基が反応性・化学選択性に大きく影響を与えることが明らかとなり、それらを適宜選択することによって、3種類の多環性骨格を作り分けることができた。そのうちの1つについては当初、分子内[2+2+2]環化付加反応が起こって生成した4/6/6員環骨格と推定し、研究計画書にもそのように記載した。しかし、当該年度の研究によってその構造推定が誤りであり、正しくは環化異性化反応によって生成した5/5/6員環骨格であることを明らかにすることができた。 3)新規C-H活性化を利用したベンジルアレン-内部アルキンの環化異性化反応:ロジウム触媒をベンジルアレン-内部アルキンと処理したところ、ベンゼン環上のC-H結合の活性化を伴った環化異性化反応が進行し、6員環と7員環とベンゼン環が縮環した三環性化合物が一挙に得られることを見出した(本結果は J.Org. Chem. に投稿し、受理された)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初、i) アレン-アルキン-アルキンの環化異性化反応、iii) アレン-アルケン-アルキンの不斉[2+2+2]環化付加反応、の2つの反応開発を計画した。 i) に関しては、目的の環化異性化反応の開発に成功した。また、アレンとアルキンをつなぐ側鎖を1炭素増炭した基質の反応を検討した結果、5/5/7員環骨格の合成にも成功し、多様な環構築の可能性を示すことができた。さらに反応中間体の単離およびX線結晶構造解析による構造決定により、反応機構を明らかにした。 ii) に関しては、目的の環化異性化反応の開発に成功した。また、合成した3種類の骨格のうちの1つについて、X線結晶構造解析によって、当初推定した構造が誤りであることを突き止め、正しい構造を明らかにした。 さらに、当初計画していなかったが、ベンジルアレン-内部アルキンの反応を検討し、ロジウム触媒存在下でベンゼン環のC-H結合の活性化を伴った環化異性化反応が進行し、6員環と7員環とベンゼン環が縮環した三環性化合物が一挙に合成できることも明らかにした。さらに数種の重水素化実験を行い、反応機構を明らかにするとともに、過去に報告した類似の環化異性化反応の反応機構を訂正するに至った。 以上示した通り、計画 i) とii)を達成したことに加えて、新規環構築反応の開発に成功したことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に記した通り平成30年度は、アレン-アルキン-アルキンの環化異性化反応の天然物合成への応用、アレン-アルケン-アルキンの分子内[2+2+2]環化付加反応の分子間[2+2+2]反応への応用を検討する。予備実験から、アルケンとしてアクリルアミドを用いた場合に、ロジウム/BINAP触媒存在下で目的の[2+2+2]環化付加反応が高い収率で進行することを確かめている。今後は基質適用範囲の検討を行う。さらに、本環化反応で得られる環化成績体は不斉点を有するために、キラルロジウム触媒を用いる不斉環化反応への応用も試みる。
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