研究課題/領域番号 |
17K15423
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 祐輔 京都大学, 薬学研究科, 助教 (90509275)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 合成化学 / 触媒 / 糖 / ペプチド / 中分子 / 光反応 / 超原子価ヨウ素 |
研究実績の概要 |
(1)N-グリコシル化反応: グリコシル化反応でもっとも繁用されるトリクロロアセトイミダート型の糖供与体(シュミット供与体)を用いてアミドを直截的にN-グリコシル化する反応を検討した。興味深いことに、シュライナーチオウレア触媒と2-ヨードベンズイミダゾリウム塩から成る共触媒系を用いた場合に予期せぬオルトアミド体が主生成物となった。本手法は、ジペプチドやトリペプチドのアスパラギン残基に適用可能であった。更なる検討の結果、今回新たに開発した2-ヨードベンゾイミダゾール-ブレンステッド酸複合塩触媒を用いると、所望のN-グリコシド体が立体選択的に生成することを見出した。トリペプチドのアスパラギン残基の導入にも成功し、初のトリププチドN-グリコシド体の効率合成を達成した。 (2)アミノグリコシル化反応: オルト位にメトキシメチル基を有するヨードベンゼンから合成したヨードベンゼンジアセタートとトリフルオロアセトアミドを塩基性条件下で攪拌すると、N-トリフルオロアセチルイミノヨージナンが得られた。また、X線結晶構造解析によりオルト位置換基の安定化の寄与を確認することができた。一般に、N-アシルイミノヨージナンは加水分解やホフマン転位が起こりやすいなどの課題があったが、初の単離・構造決定に成功した。得られたイミノヨージナンを用いて、ガラクタールのアミノグリコシル化反応に成功した。アルコールとしては、セリン誘導体やジオスゲニンなどの多官能性のアルコールが適用可能あった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)N-グリコシル化反応: 同じトリクロロアセトイミダート型の糖供与体からオルトアミド体とN-グリコシド体を作り分ける2種類の触媒系を開発した。本反応をトリペプチドのアスパラギン残基の糖鎖導入に応用し、トリププチドN-グリコシド体の初の合成に成功した。 (2)アミノグリコシル化反応: ガラクタールと新規に開発したアミノ化剤を用いて、アミノグリコシル化反応に成功した。反応には、セリンやジオスゲニンなどの多官能性アルコールを導入することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)N-グリコシド化反応:チオ尿素触媒とハロゲン結合供与体の共触媒系を2位に隣接関与基を持たない2-O-Bn-グルコース誘導体に応用し、未だ選択的に合成できていないα-N-グリコシド体の合成に挑戦する。また、2-ヨードベンゾイミダゾール-ブレンステッド酸塩の更なる応用として、アミドの直截的な付加反応による2-デオキシ-N-グリコシド体の合成を目指す。 (2)アミノグリコシル化反応: アミノ化剤の合成法について、収率・スケールアップに課題が残るため、試薬の改良を行う。また、アミノグリコシル化反応の適用拡大として、選択性の制御が難しいグルカール誘導体への応用を目指す。
|