コバルト触媒反応の環化成績体を高エナンチオ選択的に得る条件を探索するところから始めた。容易に入手可能もしくは合成可能なキラルコバルト錯体を数十種類用意し、オレフィンの分子内ヒドロアルコキシル化反応に適用した。溶媒や試薬も最適化することによって現在までに中程度のエナンチオ選択性で環化成績体を得ている。 生成物の絶対配置を決定するために、生成物を絶対配置既知化合物から別経路で合成した。比旋光度およびHPLCの保持時間を比較することによってコバルト触媒反応成績体の絶対配置を決定することに成功した。この手法によって本研究で合成する予定の分子内ヒドロアルコキシル化反応成績体の多くの絶対配置を決定することができ、不斉発現の議論に役立つと考えている。 不斉反応の開発と同時にアキラルな系ではあるものの、有用な複素環構築法を開発した。ごく最近、アルケニルカルバメートを同条件に付したところ、環状カルバメートが高収率で得られることを見出した。現在は基質一般性の検討を行っている。 また申請者は新たに硫黄性求核種の適用も試みている。これによって、生理活性物質などにみられる含硫黄複素環骨格を構築することが可能になる。過去の報告を見るとアルケニルチオールは光照射による非選択的なエンチオールが分子内で進行するため、単一の生成物を得ることが困難であった。様々な検討の結果、チオール部位を保護した基質を用いることによって、低収率ながらヒドロチオ化反応が選択的に進行することを見出した。
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