研究課題/領域番号 |
17K15427
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
田湯 正法 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (20632780)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スルホニウム / C-H官能基化 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、電子豊富ではない芳香環への置換基導入を実現するため、スルホキシドを活性化する酸無水物の検討を中心に研究を行った。 これまでトリフルオロメタンスルホン酸無水物を活性化剤として用いてきたものの、本試薬で発生させたスルホニウム種は、ベンゾチオフェンや電子求引基をもつインドールのような電子豊富ではない芳香族化合物と反応せず、原料を回収するのみであった。 そこで、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物をはじめとする様々な酸無水物や、Corey-Kim酸化として知られるN-クロロスクシンイミドとジメチルスルホキシド (DMSO) の組み合わせも検討したが、芳香環との反応は全く進行せず、原料を定量的に回収するのみであった。 さらに、メトキシ基などが置換した電子豊富なベンゼン誘導体を基質に用いた際も反応が進行しなかったため、DMSOから生じるスルホニウム種の求電子性は予想よりも大幅に低いことが明らかになった。 しかしながら、先のベンゼン誘導体を基質とした反応において、ジフェニルスルホキシドとトリフルオロメタンスルホン酸無水物から生じるスルホニウム種では反応が進行し、原料のホモ二量体を与えた。本結果から、アリールスルホキシドから調製したスルホニウム種とアルキルスルホキシド由来のものでは、反応性が大きく異なることが明らかになった。 以上のように平成30年度は望むような結果は得られなかったものの、DMSOから生じるスルホニウム種の反応性の限界と、アリールスルホキシド由来のスルホニウム種の反応性の高さを知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の反応温度である-78℃または-40℃ではスルホニウム種の求電子性が予想よりも大幅に低いため、電子豊富ではない芳香環との反応が全く進行しなかったと考えられる。しかしながら、DMSOから生じるスルホニウム種は-30℃よりも高温になると、硫黄原子のα位の脱プロトン化により誘起されるPummerer反応を起こしてしまうため、反応温度を昇温できず、反応性を向上させることができなかった。 さらに、今後のエナンチオ選択的な反応への展開を考慮して、アリールスルホキシドの使用を視野に入れていなかったため、アリールスルホキシド由来のスルホニウム種の反応性の高さに気付くのが遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
スルホニウム種の求電子性を大幅に向上させるため、スルホニウム種の硫黄原子上にトリフルオロメタンスルホナート基よりも脱離能の高い置換基が必要となる。そこで、硫黄原子上に脱離能の高い置換基を与える超原子価ヨウ素試薬のような活性化剤を検討する予定である。 また、アリールスルホキシド由来のスルホニウム種は脱離するプロトンをもたないため、室温付近でも副反応であるPummerer反応の進行を避けられること、およびアルキルスルホキシド由来のスルホニウム種とは異なる反応性を示すことが平成30年度の研究で明らかになったことから、アリールスルホキシドの検討を中心に研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度はこれまでに購入した試薬や器具でまかなうことができたため、節約することができた。 平成31年度(令和元年度)は、これまで自分で調製していた試薬や脱水、脱気溶媒などを試薬メーカーからの購入に切り替えることで研究スピードの大幅な向上を図る。
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