研究課題/領域番号 |
17K15427
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
田湯 正法 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (20632780)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スルホキシド / スルホニウム / 有機硫黄化学 |
研究実績の概要 |
2019年度は8月末まで英国に客員研究員として赴任していたため、9月以降に得られた知見について記す。 本年度は電子豊富ではない芳香族化合物とスルホニウム種を反応させるため、高い反応性(求電子性)を有するスルホニウム種の生成について検討した。すなわち、スルホニウム種の硫黄原子の求電子性を高めるべく、スルホキシドを活性化させるための求電子剤について詳細な検討を行った。これまで求電子剤として使用してきたトリフルオロメタンスルホン酸無水物よりも強力な試薬として、高い脱離能を有する超原子価ヨウ素試薬(PIFAやPIDA、Togni試薬)を用いて、ベンゾチオフェン(基質)と反応させたものの、目的の反応は進行しなかった。また、ヨウ素原子の電子密度をさらに低下させるために、フェニルヨードジトリフルオロメタンスルホネートを合成して本反応に用いたが、反応は進行しなかった。 一方、基質の適用範囲を調べるために、基質としてインドールと同様に電子豊富な芳香族であるピロールやフランを用いて検討を行った。しかしながら、従来のDMSOとトリフルオロメタンスルホン酸無水物の組み合わせでは反応性が高すぎたためか、複雑な混合物を与える結果となった。また、反応性を少し低下させるためにトリフルオロ酢酸無水物を用いたが、同様の結果となった。 以上より、基質とスルホキシド、求電子剤の組み合わせが反応を進行させるために非常に重要であることが明らかとなった。すなわち、それぞれの電子密度や軌道のエネルギー準位が反応性に大きく関わると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基質とスルホニウム種との組み合わせが非常に重要であることがあきらかとなったものの、当初予定した基質の拡張までには至っていない。適切なスルホニウム種をいまだ開発できていないことが原因である。 また、2018年9月から2019年8月まで英国に客員研究員として赴任していたこともあり、当初の予定から遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
基質とスルホニウム種との適切な組み合わせを見出すことを最優先の課題として進める。 基質の電子密度やスルホニウム種の硫黄の求電子性のマッチングが非常に重要であることが明らかとなったため、計算化学を駆使して研究の推進に役立てる。また、スルホニウム種の反応性について一般的な知見を得られるように、基質とスルホニウム種との反応の法則性を見出す。 さらに、電子豊富ではない芳香族化合物をスルホニウム種と反応させるために、スルホキシドの硫黄原子自体の電子密度を初めから低く抑えるために、新たなスルホキシドの設計も考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は8月末まで英国に客員研究員として赴任していたため、当該研究を進めることができなかった。その間の残った予算を次年度に使用することとした。
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