研究課題/領域番号 |
17K15428
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
伊藤 元気 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (30610919)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 合成化学 / 芳香族化合物 / ロジウム(II)触媒 / ナイトレン / 炭素-窒素結合変換 |
研究実績の概要 |
今年度はロジウム(II)ナイトレンを用いるアミン類の変換反応の開発を行い、以下の成果を得た。 (1)前年度までに、芳香族第一級アミンに対して触媒として二核ロジウム(II)錯体存在下、3価のヨウ素反応剤であるイミノヨージナンを作用させるとナイトレンのN-H挿入と酸化がワンポットで進行し、スルホニルジアゼンが得られることを報告した。本手法を2-アミノフェニルボロン酸誘導体に適用すると、生成したスルホニルジアゼンからC-N結合およびC-B結合の切断により、速やかにベンザインが生成することを見出した。アジドチミジンのような医薬品を含む様々なアジドの存在下で反応を行ったところ、ベンザイン生成と付加環化がワンポットで進行し、複素環を一挙に構築できた。2-アミノフェニルボロン酸誘導体は安定かつ入手容易なうえ、中性、室温以下の穏やかな条件で利用できることから、従来のベンザイン前駆体よりも官能基許容性に優れた新規合成法になり得る。 (2)α-アミノ酸誘導体に対してN-Hアミノ化の条件を適用することで、カルビドパ、シラザプリルなどの医薬品やネガマイシンのような天然物の部分構造であるα-ヒドラジノ酸誘導体が得られることを見出した。一般によく用いられている窒素上にトシル基をもつイミノヨージナンで反応を行った場合にはほとんどの基質において生成物が得られないのに対し、3,4-ジメトキシベンゼンスルホニル基をもつものを用いると収率の劇的な向上とともに適用範囲が大幅に拡大され、α-アミノ酸誘導体の他、かさ高いアルキル基をもつ脂肪族アミン類からのヒドラジン合成に成功した。本手法は脂肪族アミン類では初となるロジウム(II)ナイトレンのN-H挿入の例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度開発したベンザイン生成法は従来とは全く異なる前駆体を用いるものであり、非常に新規性が高い。また、有用な合成中間体であるベンザインを穏和な条件下で生成できることから高い官能基許容性を示し、医薬品のような複雑な化合物の後期官能基化に適用できた点は注目に値する。 α-アミノ酸誘導体のN-H挿入反応では、光学活性体を含むα-ヒドラジノ酸を直接合成できることから、医薬品の合成や候補化合物の探索に有用な手法であると考えている。また、イミノヨージナンの構造がN-H挿入反応に大きく影響したことから、今後、金属ナイトレンを用いるアミン類の変換反応の開発を推進するうえで重要な知見が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに開発したN-HまたはC-Hアミノ化反応を用いて医薬品などの有用化合物合成へと展開する。また、イミノヨージナンの窒素上の保護基についてN-Hアミノ化反応への影響を精査し、反応機構に関する知見を得るとともに、続くC-N結合変換反応において最適な構造についても調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の残金が生じたが、使用計画には特に影響はない。
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