研究課題
本研究では、キラル分子を認識する次世代グラフト型キラル高分子の開発と不斉触媒反応への応用を目的としている。従来の高分子不斉触媒の多くはポリスチレンなどのビニルポリマーの側鎖に触媒を共有結合で結合しており、ランダム構造である高分子鎖に触媒分子もランダムに配置されているため、立体選択性が低下する場合が多い。従って触媒の高分子化が研究されてきた。そこで、申請者は耐久性の高いポリエチレンに不斉構造を有するビニルモノマーをグラフト重合した場合、不斉環境を規則的に配置することができ、グラフト鎖自身が巨大な不斉環境を生み出すと考え、多くのキラル骨格の基本骨格となっているビナフチルモノマー(BINOL)誘導体を合成する。BINOL誘導体ポリマーはらせん構造を形成することが報告されており、これをグラフト重合することで、らせん高分子固定化グラフト型高分子の開発に期待できる。これまでに申請者は3種類のBINOL誘導体をグラフト重合しグラフト型キラル高分子を合成してきた。さらには、これらをもちいて、不斉アルキル化反応へと応用してきた。H30年度は、これまで合成してきた触媒を用いてFlow反応へ展開することとした。
3: やや遅れている
前年度作成した(R)-BINOL誘導体を重合したグラフト型キラル高分子触媒g-BINOLをリアクターに充填しGrignard反応へ応用したところ、チューブ内で試薬が結晶化するなど、予期せぬ事態が起き、実験計画に遅れが生じてしまった。検討を重ねた結果、フローリアクターを用いた不斉Grignard反応において、Yeild:61%、ee93%で反応が進行することを確認した。
今後、(R)-BINOL誘導体を重合したグラフト型キラル高分子触媒g-BINOLを用いたGrignard反応の最適化条件検討を行う。同時にBINP誘導体の合成とこれを用いてポリエチレン不織布へ放射線グラフト重合を用いて固定化を行う。
前年度で行うFlow反応計画を実施することができなかったため。次年度への使用を考えている。
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Asian. J. Org. Chem.
巻: 7 ページ: 1071-1074
10.1002/ajoc.201800125